【書評】『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』 中野剛志 著

目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】お金・財産

認知科学者の苫米地英人氏の著書「DR.苫米地資産運用なら誰もが絶対にrichになれる!」を思い出しました。
そのなかで著者は下記のとおり言っています。

私たちは100万円といったら、額面どおり100万円しか使えないのに、彼らだけは何十倍、何百倍に増やしていいのです。世間では彼ら“お金使い”のことを銀行家と言います。

そのときは、少し気にはなりましたが、読み過ごしていました。苫米地氏の言っていることは「信用創造」といい、金融機関に従事している人ならば、知っていて当然かも知れませんが、一般人は実感として理解しがたいものです。

『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』では苫米地氏よりも一歩も二歩も踏み込んでいます。「信用創造」から派生してくるいろいろな経済事象を、わかりやすく説明されています。

加えて読んでいくうちに、今までの常識が180度ひっくり返るようなことになります。これを信頼するのか胡散臭いと思うのかは読者次第ですが、いままでの常識とは違う点から日本の社会経済を俯瞰したい人におすすめの一冊です。

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要約ポイント

書籍のなかから重要ポイントを引用して、解説を加えました。

個々の正しい行動でも、それが積み重なった結果、全体として、好ましくない事態がもたらされてしまう。このような現象を、経済学の用語で「合成の誤謬」と言います。

ミクロ(個々の企業や個人)の視点では正しい行動も、その行動を集計したマクロ(経済全体)の世界では、反対の結果をもたらしてしまう。デフレ下で支出を切り詰めて楽になろうとしたら、それがさらなる需要縮小を招き、デフレが続いて、生活がますます苦しくなる。

「合成の誤謬」は、マクロの経済全体の運営をつかさどる「政府」が直すしかないのです。

「合成の誤謬」についての記述です。市場に任せておくと、より一層深みにハマっていってします。デフレの場合は、人為的に政治力や財政力の使って政府が行うべきであると言っています。

これは政府しかできないことであり、逆に言えば政府の存在意義のひとつなのでしょうね。

例えば、a銀行が、借り手のA社の預金口座に1000万円を振り込む場合、それは銀行が保有する1000万円の現金をA社に渡すのではありません。単に、A社の預金口座に1000万円と記帳するだけなのです。  このようにして、銀行は、何もないところから、新たに1000万円の預金通貨を生み出すことができてしまいます(これを「信用創造」といいます)。銀行の貸出しが元手となる資金の量的な制約を受けるということはありません。

銀行の貸出しの制約となるは、貸し手(銀行)の資金保有量ではなく、「借り手の返済能力」だ

これは貸借対照表で説明したほうがわかりやすいですね。

貸借対照表

(ケース1)が資本金で集めた預金のうちから1,000万円を貸付けています。銀行はこのようにはしていません。

銀行は「信用創造という方法でお金を新たに創りだし、貸付しているのです。これが(ケース2)です。方法は引用で説明している通り、A社の預金口座に1,000万円と記帳するだけです。

貸借対照表上は資産の部の貸付金1,000万円を計上します。
銀行にあるA社の預金は、A社によって自由に引き出されるので負債の部に計上します。

銀行は、人々が預けたお金を手元にして、国債を買うのではありません。そうではなくて、銀行は、中央銀行が供給した準備金を通じて国債を買うのであり、そして政府支出によって民間預金が増えるのです。

銀行が国債は準備金というワンクッションがありますが、基本的には国債は政府の借り入れですから上の(ケース2)と同じようになります。

つまり銀行が国債を購入することによって「信用創造」され、新たなお金が作り出されています。
民間部門が借り入れするか政府が国債を発行すれば、新たにお金が作れるのです。

デフレ下では企業の投資は期待できませんので、政府の国債発行によりお金を作ることにより民間預金が増える理屈です。

財政赤字の制約を決めるのは、インフレ率である。インフレになり過ぎたら、財政赤字を拡大してはいけない。  財政赤字を無限に拡大できない理由は、そんなことをすると、ハイパーインフレになってしまうからである。

インフレになりすぎないのであれば、財政赤字つまり赤字国債の発行はOKということです。

税金とは、物価調整の手段なのです。財源確保の手段ではありません。

税は財源確保の手段ではありません。通貨発行権のある政府には、税で財源を確保する必要など無いのです。

税金の考え方です。税金はインフレを抑制するためである。
一般に言われていることとは全く違います。

財政健全化は、あくまでインフレの行き過ぎを防ぐための手段にすぎないのです。デフレであるうちは、財政は健全化できないし、すべきでもない。

デフレ下では財政健全化をしても意味がないという意味でしょうね。

書籍情報

概要

書 名 『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』
著 者 中野剛志
発行所 KKベストセラーズ
発行日 2019年4月30日

著者の紹介

1971年、神奈川県生まれ。評論家。
元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。
96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。
2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。
01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。
論文“TheorisingEconomicNationalism”(NationsandNationalism)でNationsandNationalismPrizeを受賞。
主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)
『TPP亡国論』(集英社新書)
『日本の没落』(幻冬舎新書)
『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』など

目次

はじめに
第1部 経済の基礎知識をマスターしよう
 第1章 日本経済が成長しなくなった理由
 第2章 デフレの中心で、インフレ対策を叫ぶ
 第3章 経済政策をビジネス・センスで語るな
 第4章 仮想通貨とは、何なのか
 第5章 お金について正しく理解する
 第6章 金融と財政をめぐる勘違い
 第7章 税金は、何のためにある?
 第8章 日本の財政破綻シナリオ
 第9章 日本の財政再建シナリオ
第2部 経済学者たちはなぜ間違うの?
 第10章 オオカミ少年を自称する経済学者
 第11章 自分の理論を自分で否定した経済学者
 第12章 変節を繰り返す経済学者
 第13章 間違いを直せない経済学者
 第14章 よく分からない理由で、消費増税を叫ぶ経済学者
 第15章 主流派経済学は、宗教である
本書のまとめ

感想

題名のとおり目からウロコが落ちました。特に「信用創造」については、まだ腑に落ちません。
著者が言っていることが正しければ、民間融資は確実に償還ができれば無利子でも銀行は元本分で利益があるということでしょうか?

また、国債を受け入れれば、元本は銀行の利益になるということでしょうか?まだまだ私の理解不足もあるとお思います。

最後に著者の中野剛志 様、「貨幣」「金融」「財政」「税」などについて貴重な見解をいただきありがとうございます。
続編の『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』もぜひとも読んでみたいです。


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