【書評】『命の停車場』あなたはどんな死を望みますか?

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命の停車場

最近、書店にいくと定年後、老後、介護に関する書籍が増えてコーナーまで出来ていてびっくりしました。
団塊の世代が70代前半を迎えて、いわゆる「老後本」の需要が高まっているのでしょうか。
それら「老後本」は老後の生き方や資産管理などのハウツウ本として書かれているものがほとんどです。

今回紹介する『命の停車場』は小説です。端的に言えば、具体的なケースをいくつか想定して書かれています。
本に没頭してしまっている自分がいることを感じます。

医療の専門用語を使っていますが、あまり違和感なく読むことができます。
読んで泣けてきますし、覚える気がなくても在宅医療についての知識が吸収できます。
自分の老後、親の介護、在宅医療のことが気になる人にとってもおすすめの一冊です。

目次

本の基本情報

書 名 『命の停車場 』
著 者 南 杏子(みなみ きょうこ)
発行所 株式会社幻冬舎
発行日 2020年5月26日

著者の紹介

著 者 南 杏子(みなみ きょうこ)
1961年徳島県生まれ。
日本女子大学卒。
出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入し、卒業後、都内の大学病院老年内科などで勤務する。
2016年『サイレント・ブレス』でデビュー。他の著書に『ディア・ペイシェント 絆のカルテ』『ステージ・ドクター彩々子が熱くなる瞬間』がある。

本の目次

プロローグ
第1章 スケッチブックの道標
第2章 フォワードの挑戦
第3章 ゴミ屋敷のオアシス
第4章 プラレールの日々
第5章 人魚の願い
第6章 父の決心

本の要旨

主人公の白石咲和子は62歳、都内にある城北医科大学病院退救命緊急センターで緊急救命医として働いている。
ある夜勤当番のときに、大規模交通事故で重症患者を7人同時に受け入れたことと、医者でない人間に治療させたことの責任をとって、病院を後にする。

唯一の肉親である父親の住んでいる金沢へ帰ることにした。
子どものときからの知人である仙川徹が経営している「まほろば診療所」に勤務することになった。

「まほろば診療所」は在宅医療専門の診療所である。在宅医療は未知の分野であったが、長年、緊急救命医であった咲和子はそれほど難しい仕事ではないと思った。

しかし、各家を訪問してみると救命救急センターと勝手が違うことに当惑する。

老老介護の家庭では、患者本人以上に介護している家族が身勝手なため、家族に死とはどういうことかレクチャーから始めなければならないことを経験する。

IT企業の社長である患者から先端医療の幹細胞治療を在宅でおこないたいと要望を受ける。

また広く共有すべき医療データを保存と蓄積に努めていないのは、医療者側の責任であることを痛感するのであった。

ゴミ屋敷に住む患者からは家の片付けが怠慢だからではなかった。
やりたくてもやれない事を知る。

厚生労働省の高級官僚の患者さんは、在宅医療の必要性について教えてくれます。

6歳の末期がん患者は運命を受け入れながらも、死後にも希望を捨てない幼児のけなげな気持ちを訴えています。

そんななか、咲和子の父親は骨折から誤嚥性肺炎、脳梗塞を発病して老化衰退していった。

父親は「楽にさせてくれ」と訴える。
「自分の意思を持って人生を全うしたい」と語り、積極的安楽死を望む。

父の気持ちが痛いほどわかる咲和子は、最後に……………

感想

医療に従事していないと書けない小説ですね。
「在宅医療」「老老介護」「先端医療」「医療データ」「ゴミ屋敷」「在宅医療の必要性」「幼児の末期がん」「安楽死」について小説の手法を通じて、わかりやすく説明されています。
いろいろ考えさせられました。

特に「安楽死」については消極的安楽死(尊厳死)と積極的安楽死があることが初めてわかりました。

最後に父親の「自分の意思を持って人生を全うしたい」には泣かされます。

映画化

2021年5月21日に全国ロードショーが決定しています。

白石咲和子役に吉永小百合さん
まほろば診療所長仙川徹役に西田敏行さん
咲和子父白石徹役に田中泯さん
その他松坂桃李さん、広瀬すずさんなど豪華キャストです。

吉永さんにはピッタリの役ですね。いまから非常にたのしみです。

最後に

最後に著者の 南 杏子 様、「自分はどんな死を望むのか」「家族が死に瀕した時何ができるのか」などの現代医療・介護の問題点をいろいろな人間模様を通じて、浮き彫りにしていただき、ありがとうございます。

ますますの活躍をご祈念申し上げます。


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