65歳に遺言書の下書きを作っておこう、いざという時に慌てないために

お金・財産

70歳近くになると人生の終わりを意識する人が多くなると言われています。
それに伴って遺言書を書こうと考える人が増えるようです。

その前段階である65歳に「遺言書の下書きをしてみよう」いうのが私からの提案です。

正式な遺言書は70歳以降でいいと思っています。
下書きを何回も修正することで、正式な遺言書ができるイメージです。

また遺言書の一部である相続財産目録はパソコンのワープロソフトで作成することができるようになったことも下書きをしやすくなった一因です。

遺言書は法律に規定されているため、そのルールを理解しておかないと意味をなしません。
ルールを理解することは面倒ことですが、下書きを作りながらであればスムーズに理解できるはずです。

近年、遺言書と似たものでエンデイングノートがあります。
エンデイングノートは法律に縛られることなく、自由に記載できるといった点がメリットになって評判になっています。

遺言書の書き方を分かっていれば、エンデイングノートはいつでも書けると思います。
そんなことからも遺言書の下書きを作ってみましょう。

なお、この記事の読者は60歳前後の人を想定しています。

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遺言の種類

ここは簡単に読み流してもらって結構です。
遺言の定義と3種類の遺言があることが分かればOKです。

遺言とは

遺言とは、被相続人(死亡者)が、自分の財産(相続財産)を、どのように処分するのかという意思を文書で示したものです。
合法的な遺言を作成するためには、法的な要件を満たした書面を作成する必要があります。

記載事項で法律上定められた事項は財産に関することだけです。
財産以外のことを書いてはいけないということではなく、付言事項として任意で記入することができますが、法律上拘束されるものではありません。

遺言の種類

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

自筆証書遺言)民法 第九百六十八条 
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

公正証書遺言)民法 第九百六十九条
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 証人二人以上の立会いがあること。
 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

秘密証書遺言)民法 第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

egov法令検索 民法

【遺言の種類(まとめ)】

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
作成者本人公証人制限なし
証人不要2人以上2人以上
検認必要不要不要
費用ほぼ不要作成手数料作成手数料
保管本人公証役場本人
長所作成が容易
秘密保持
内容明確
安全
秘密保持
安全
短所紛失改ざん
無効の可能性
費用がかかる
手続きが煩雑
内容が漏れる
無効の可能性
手続きが煩雑

遺言書作成の手順

一番作りやすい「自筆証書遺言」を基準に説明していきます。

  1. 財産の調査
  2. 財産の評価
  3. 例文を参考に遺言を下書きする

「財産の調査」ではすべての財産を洗い出します。
内容の精度は人それぞれかもしれませんが、財産管理表を作っていれば、それをベースにすれば受け落ちがなく調査できます。

財産管理表は作っていない人は「家計の資産管理簿」を紹介します。これを使って財産管理表を作って下さい。

「財産の評価」では相続税の評価額を計算します。
相続税の課税対象にならなければ厳密にやらなくてもいいのですが、この機会に相続税のさわりを理解しましょう。

最後に「例文を参考に遺言を下書きする」です。ここでは典型的な相続の例文を示しました。
また財産目録を別紙で添付する方式を取りました。

添付方式にしたのは本文が手書きですが、財産目録はワープロソフトで記載ができることによります。
何回でも書き直すことを前提にしているためです。

財産の調査

相続の対象になる財産とはお金(円)に換算できる全ての財産です。
平たく言えば価値のあるもの全てです。

預貯金や株式であれば把握している人は多いかと思いますが、定期や生命保険の満期の時期や金額、土地の評価額などは把握できていない人も多いのではないでしょうか?

相続財産だけではなく老後資金の把握にもなりますから、この機会に調べてみましょう。

おすすめするやり方はエクセルなどの表計算アプリを使って、財産管理表を作ることです
どのような様式にしていいか分からなければ下記を参考にして下さい。

上記で説明している金融広報中央委員会の「家計の資産管理簿」にあるダウンロード(ZIP 19KB)を使って下さい。(無料で使うことができます。)

「家計の資産管理簿」は相続財産を整理するものではなく、生前の財産を管理しておく帳簿です。
新たに書類を作らなくても、「家計の資産管理簿」をベースに調査したほうが容易です。

またこの「家計の資産管理簿」は後で説明しますが、遺言書の添付書類である財産目録の基になる帳票にもなります。

下表はダウンロードファイルのなかの1つのシートである「資産負債総括表」です。
このシートを自分用にアレンジして下さい。

資産や負債項目の明細が別シートにあります。
そこに個別の資産状況を入力して総資産額を把握できるようになっています。

【資産負債総括表】

 前回チェック時最 近 時前回比増減額



預貯金(普通)   
預貯金(定期性)   
郵便貯金(普通)   
郵便貯金(定期性)   
信託   
有価証券   
投資信託   
貯蓄性の保険   
その他の金融資産   
    
計(A)   

住宅ローン   
その他借入金   
    
計(B)   
正味金融資産(A-B)   



土地   
建物   
その他実物資産   
    
計(C)   
総資産(A-B)+(C)   

財産の評価

相続税法上は相続時(死亡時)の時価額で評価するのが大原則です。
現所有者は相続時の評価ができないので、計算時点の額を出しておこう。

相続税の評価基準は「財産評価基本通達」に示されています。
参考程度に見ておいて下さい。主なものを以下で整理しておきます。

自用土地

土地は路線価方式か倍率方式で評価します。
路線価が定まっている場合は路線価方式で、そうでない場合は倍率方式で評価します。

路線価方式による土地の評価額=路線価(千円/m2)✕奥行価格補正係数✕面積(m2)

路線価の調べ方
路線価を基とした評価額の計算例 正面路線価(300千円)×奥行価格補正率(1.00)×面積(180平方メートル)=評価額(54000千円)
引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm

倍率方式は以下の式で求めます。
固定資産税評価額は固定資産税納税通知書で調べるか、土地のある市区町村役場税務課で「固定資産税評価証明書」を取得して調べます。

倍率方式による土地の評価額=固定資産税評価額✕倍率

国税庁に様式(土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(平成31年1月分以降用))があります。
この様式を作成すれば土地に関する評価額が計算できます。

自用家屋

家屋の評価額=固定資産税評価額

動産

自動車、バイクは中古車業者の見積もりや、インターネットの中古車買い取りサイトで確認する事ができます。

金地金は流通性があり、市場価額が毎日発表されています。それを参考に評価します。
参考ページ(三菱マテリアル

国税庁に様式(一般動産及び船舶の評価明細書(平成20年分以降用)があります。

預貯金

普通預金の評価額=相続開始日の残高

定期預金の評価額=相続開始日の残高+既経過利息ー源泉徴収税額

「既経過利息」は仮に相続開始日に解約した場合の未払い利息のことです。
仮の話で解約しても、しなくてもかまいません。
ただし解約した場合金利が下がる場合は、下がった金利で計算します。

「源泉徴収税額」は「既経過利息」にかかる所得税額のことです。
「源泉徴収税額」=既経過利息✕20.315%
所得税が15%、復興特別所得税が0.315%、住民税が5%

金融機関で残高証明書、既経過利息の計算書を発行してもらいましょう。

上場株式

株式ごとに下記のうち最も低い価額で評価する。

  • 相続が発生した日の最終価格
  • 相続が発生した月の最終価格の平均額
  • 相続が発生した月の前月の最終価格の平均額
  • 相続が発生した月の前々月の最終価格の平均額

複数の上場株式を保有している場合、銘柄ごとに最も低い金額で評価することができます。

土日祝日、年末年始など証券取引所が休みで、最終価格がない場合は最も近い最終価格を採用します。

外国株式の場合は外貨で上記により評価額を算出して相続開始日の為替換算レート(TTB)を乗じで邦貨に換算します。

なお為替換算レートは最寄りの金融機関や三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場などの金融機関のWebページで分かります。

国税庁に様式(上場株式の評価明細書)があります。

一般投資信託

一般投資信託評価額=1口当たりの基準価額 × 口数 − 課税時期において解約請求等した場合に源泉徴収されるべき所得税額に相当する金額 − 信託財産留保額および解約手数料

課税時期において解約請求等した場合に源泉徴収されるべき所得税額に相当する金額
=(売却代金ー購入代金+普通分配金) ✕ 20.315% 

1口当たりの基準価額 ・口数はネットで調べられますし、証券会社から残高証明書を取得することもできます。

本文の例文

財産目録を本文とは別に作ることをおすすめします。
本文は自筆、押印が必要ですが、財産目録は自筆する必要はなく、ワープロソフトなどで作成することができます。

つまり財産は容易に差し替えが可能です。
ただし財産目録には押印が1枚1枚必要です。

民法の条文ごとに例文を示します。

相続人の廃除、廃除の取消し(民893、894)

「次男Aは遺言者に対して暴行を行うなどの虐待をした事から、遺言者は次男Aを相続人から廃除する。」

相続分の指定(民902)

「別紙財産目録1記載の財産を妻Aに相続させる。」
「別紙財産目録2記載の財産を妻Bに3分の1、長男Cに3分の1、長女Dに3分の1を相続させる。」
「別紙財産目録2記載の財産うち1,000万円を長男Eに、500万円を長女Fに相続させる。残りの財産すべてを妻Gに相続させる。

遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止(民908)

「遺言者は遺産分割協議において、別紙の遺産目録の遺産を次のとおり分割するよう、分割方法を指定する。
1、別紙財産目録1記載の財産については長男Aが取得する。
2、上記1以外の財産は次男Bが取得する。

遺言者は遺産の全部について、その分割を相続開始の時から3年間禁止する。


(4) 特別受益の持ち戻し免除(民908)
(5) 共同相続人の担保責任の減免、加重(民914)
(6) 遺留分減殺方法の定め(民1034)

包括遺贈、特定遺贈(民964)

「別紙財産目録1記載の財産を孫Aに遺贈する。」

子の認知(民781)

遺言者はA(○○県○○市○○町○丁目○番◯◯年◯月◯日生)との間に生まれたBを子であると認知する。

未成年後見人、未成年後見監督人の指定(民839、848)

遺言者は未成年である長男Aの後見人として、A(○○県○○市○○町○丁目○番◯◯年◯月◯日生)を指定する。

遺言執行者の指定または指定の委託(民1006)

遺言者は本遺言の遺言執行者として、A(○○県○○市○○町○丁目○番◯◯年◯月◯日生)を選任する。

相続財産目録の様式見本

相続財産目録の様式は定まったものはありません。
といったものの自分で決めると言ってもなかなか決まりません。

Webページを見ると弁護士・司法書士の相続財産目録の様式が多数あります。
できるだけ公が定めたものはないかと調べてみたところ、京都家庭裁判所の相続財産様式がありました。

法務局に保管する場合の様式要件

自筆証書遺言書は自分で保管することができますが、紛失、改ざんや死後に発見できない恐れがあります。
そのようなことを防止するために遺言書を法務局で保管しおくことをおすすめします。

下書きの段階では法務局に保管する必要は当然ありませんが、下書き段階から書式などを守っておけば、正式に作成した時に法務局に保管することがスムーズにおこなえます。

また法務局に保管しておくと家庭裁判所の検認が必要ありません。

【法務局保管遺言書書式要件】

  • 用紙は,文字が明瞭に判読できる日本産業規格A列四番の紙とする。 
  • 縦置き又は横置きかを問わず,縦書き又は横書きかを問わない。
  • 各ページにページ番号記。載すること。
  • 片面のみに記載すること
  • 数枚にわたるときであっても,とじ合わせないこと
  • 余白基準
    上余白:5mm以上
    下余白:10mm以上
    左余白:20mm以上
    右余白:5mm以上

まとめ(遺言書 文例 財産目録付き)

遺言書

私、遺言者◯◯◯◯は次のとおり遺言する。

第1条 別紙財産目録1【不動産】記載の財産すべてを長男Eに相続させる。

第2条 別紙財産目録2【預貯金】記載の財産うち500万円を長男Eに相続させる。

第3条 別紙財産目録2【預貯金】記載の財産うち500万円を次男Fに相続させる。

第4条 全財産から第1条及び第2条に定めた財産を除いた財産を妻Gに相続させる。

第5条 この遺言の遺言執行者として、下記の者を指名する。

事務所名〇〇司法書士事務所
所在地〇〇市◯◯町〇〇番地
職業司法書士
氏名〇〇〇〇
生年月日昭和〇〇年〇月〇〇日

(付言事項)
私は、やさしい妻と2人の子どもに恵まれ、温かくて素晴らしい家庭を築くことができ、幸せな人生でした。
Eには不動産すべてを相続させるため、中心になって管理をして下さい。必要であれば売却してもかまいません。
私が亡くなった後も、互いに助け合って幸せな人生を送ってください。

   令和◯年◯◯月◯◯日

    遺言者の住所及び氏名 〇〇市〇〇町〇〇番地 ◯◯◯◯印

財産目録

1【不動産】

番号所 在地番/家屋番号地目/種類・構造地積/床面積固定資産評価額倍率評価額
1〇〇100-1宅地450㎡6,750,000円1.2 
2〇〇700001専用住宅100㎡12,000,000円12,000,000円
3       
     小計 20,100,000円

2【預貯金】

番号金融機関名(支店名)種別口座番号相続開始時残高既経過利息源泉徴収税額評価額
1◯◯銀行◯◯支店普通12345675,000,000円5,000,000円
2◯◯銀行◯◯支店定期890123420,000,000円200,000円40,630円20,159,370円
3       
     小計 25,159,370円

3【株式】

番号銘 柄 株数証券会社/口座番号等終  値株数×最安終値
相続日相続月相続前月相続前々月
1〇〇◯700〇〇証券6,000円6,250円6,160円6,020円4,200,000円
2        
3        
       小計4,200,000円

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