マイナンバーカード保険証利用の本格運用延期

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マイナンバーカード

「健康保険証の代わりに、マイナンバーカードを使うシステムの稼働が、2021年3月末からスタートのハズが、10月に延期になる。」
こんなニュースが飛び込んできました。

理由を聞くといろいろ考えさせられましたので書き留めておきます。

私の結論は「医療情報」を患者に提供するといった加入者サイドのメリットがまったくないことが運用延期の根本原因です。

目次

運用延期の原因

各マスコミからは情報が出ていますが、政府(厚生労働省)からは第142回社会保障審議会医療保険部会の資料がありました。

そのなかの「オンライン資格確認等システムについて」が運用延期の関係になります。
原因として以下のことが示されています。

  • 新型コロナウイルスの影響
  • 半導体の不足
  • カードリーダー生産の遅れ
  • 加入者データの不備

「新型コロナウイルスの影響」「半導体の不足」「カードリーダー生産の遅れ」は今後時間の経過とともに改善していくでしょう。
「加入者データの不備」が問題です。

会議資料に示されていませんが、データだけでなくシステムにも問題はあるかもしれません。
新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)での前科があるのですから。

加入者データの不備

加入者データは誰が入力しているのでしょうか。

一般民間企業の社員の場合を例にすると、社員である個人がマイナンバーを企業に報告します。
報告を受けた企業が保険者である「協会けんぽ」「組合けんぽ」に報告して、情報を入力します。

この流れのなかで不備が生じるのでしょう。入力者だけがミスするわけではありません。報告者も原因であるケースもあるでしょう。
たとえば「社員が間違ったマイナンバーを報告してしまった。」
「保険者が間違って他人の情報を入力してしまった。」などです。

マイナンバーの報告

マイナンバーに関する法律(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第十四条)には以下のとおり規定されています。

(提供の要求)
第十四条 個人番号利用事務等実施者は、個人番号利用事務等を処理するために必要があるときは、本人又は他の個人番号利用事務等実施者に対し個人番号の提供を求めることができる。

個人番号(マイナンバー)の提供は、依頼であり、お願いです。
義務でも強制でもありません。
法律上は提供したくなければ、提供しなくてよいのです。

そのような不十分なデータで試行テストをすると、そもそも本人のデータがない場合は、医療窓口で本人認識ができなくなってしまいます。

保険者のマイナンバーの把握

法律がマイナンバーの報告を義務付けていない以上、企業や保険者のデータは不十分なものになってしまうのは当然です。

権限のない企業や保険者にマイナンバーの報告を義務づけるのは無理です。
個人情報保護の観点から義務づけは出来ないのです。
今後、マイナンバーを使ったシステムを整備するときに、同じような問題が生じることになります。

そもそものシステム導入の目的は

2019年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で医療保険事務の効率化患者の利便性の向上等を図ることしました。

特に患者の利便性の向上についてはどうなっているのでしょうか?
現在、保険証1枚で診療をうけることができるのに、マイナンバーカードだけでは受診できません。
保険証とマイナンバーカードを持っていく必要があります。

最終的にマイナンバーカードだけで、受診できたとしても保険証がマイナンバーカードに代わっただけです。
利便性が向上したとは到底考えられません。

患者がマイナンバーカードを使って、便利になったと実感できるように、仕組みを作っていかなければならないのに。

患者のメリット

マイナンバーを保健証として、利用するメリットは患者には、なにかあるのでしょうか?
現在のシステムまでは、まったく見いだせません。

患者にメリットがないから、マイナンバーの報告を拒む人がいるのです。
「マイナンバーを報告することによって、こんな良いこと、便利なことがありますよ」といったことでないと、システム化で利便性が向上した、とはならないのではないでしょうか。

患者のメリットは医療情報の提供です。
個人情報保護法が制定されてから、カルテを見ることはできるようになりました。
しかし現実には、なかなか医師に見せてくれとは言いにくいのではないでしょうか。
依頼しても「専門的で見てもわからないよ」と医師から断られるとも聞いたことがあります。

デジタルでシステム化されていれば、人的な関わりを抜きにして自分の医療情報にアクセスすることができるようになります。

医療情報ですから情報漏えい等には、最新の注意と防止策により取り組むことは当然です。

いつでも自分の医療情報を確認できることは、非常に大きいメリットです。
そのようなメリットがあるとマイナンバーの提供を拒否することが減ってくるのです。
マイナンバー制度の有り難みがわかるようになってきます。

まとめ

マイナンバーカードの保険証利用システムが延期になりました。
加入者データの不備が大きな原因です。

法律上、マイナンバーを会社に報告する義務がないことがその要因です。
根本原因は「医療情報」を患者に提供するといった加入者サイドのメリットがまったくないことです。

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