2021年10月に、日本年金機構から年金受給者97.5万に、別の受給者の情報が記載された「年金振込通知書」が送付されました。
受給者本人からすれば、全くデタラメな年金額が記載された書類です。
テレビ・新聞などで一斉に報道されたため、覚えている方も多いと思います。
日本年金機構から、この件について報告がありました。
「年⾦振込通知書の印刷誤り事案検証状況報告」
事件の内容については下記の記事を参照下さい。
機構の公式原因は、印刷受託会社のオペレータ社員が設定誤りをしたこととチェックを怠ったことです。
防止策は検査とチェックの強化です。
私的にはほんとにそれだけではなく、根本原因があるのではないかと思っています。
では解説していきます。
「年金振込通知書」とはどんなものか
上図が様式です。左側が表面に住所・氏名が、右側が裏面に年金額が記載されています。
「状況報告」の要約
原因
印刷機の出⼒設定を印刷オペレータが誤って設定し印刷したため、表⾯と
裏⾯で別⼈のデータが印刷された。印刷機の出⼒設定時の誤りをチェックする仕組みを講じていなかった。
履⾏開始前検査時に、管理番号で表裏の突合チェックをする旨、機構
に説明していたが、本番作業時にこのチェックが⾏われていなかった。
要は受託会社のオペレーターが出力設定をミスしたうえに、設定チェックや表裏の突合チャックもしていなかったということです。
管理番号というのは7桁の数字で受給者を特定する番号になっており、表裏に印字することになっており、それを目視で確認し同一番号であればOKという仕組みです。
再発防止策
履⾏開始前検査や本番検証品(テスト品)の確認、履⾏中検査において必要なチェックを厳格に実施することを前提に、最終的なアウトプット段階においても完成品の現物で検査することを具体化(発送前の本番品の検査のとして、本番印刷⽤データへのダミーデータの付加及び発送前の引き抜き確認を制度化)
機構による事前のテスト品だけでなく、本番品の検査も必要であるということです。
詳細な原因
下の図を見て下さい。
スマホの人は横向きにすれば拡大してみやすくなります。(細かくてすいません。)
【正しい手順】
- 表面印刷
- 裏面印刷
- 裏面を裏返す
- 表と裏を圧着
- 表面と裏面の管理番号を確認
【誤った手順】
- 表面印刷
- 裏面を反転
- 裏面印刷
- 裏面を裏返す
- 表と裏を圧着
オペレーターは何を思ったのか、裏面を反転して印刷してしまった。
表面と裏面の管理番号が一致しているか確認していればミスを防止できたのに、管理番号の突合チェックをしなかった。
原因の原因はなんだろう
原因がオペレーターの人為的ミスとチェックの手抜きなので、再発防止のために検査を強化することはそのとおりだと思います。
しかし本当にそれだけで再発防止になるのでしょうか?
作業工程のなかで違和感があるのは、表面と裏面を別々に印刷していることと、裏面をひっくり返して圧着していることです。
なんでこんなややこしいことをするのか疑問です。
表と裏を一緒に印刷して、真ん中で折って圧着すれば表と裏が間違うことはほぼないのではないでしょうか。
作業を単純化することが、ミスを防止する1番の方法だと思いませんか。