令和4年4月より年金の受給年齢の上限が70歳から75歳に変更になりました
これによって60歳から75歳の間で受給できるようになりました。
では、何歳から受給するのがいいのか?ますます分からなくなってきました。
私の結論は
「65歳の時点では75歳まで繰り下げ受給することを想定して下さい。事前に何歳まで繰り下げることを決めておく必要はありません。
お金が必要になったら、その時点で受給して下さい。
また、さかのぼり受給をすれば、まとまったお金を得ることもできます。ただし、さかのぼり受給をすると税金などが増えますので、年金事務所などと相談のうえ、おこなって下さい。」
以下で詳しく説明します。
なお、この情報は日本年金機構の「ねんきんダイヤル(0570-05-11659)」で確認した一般的な事項によります。
実際に年金を受給する際には、ご自身で日本年金機構や最寄りの年金事務所に確認して対処して下さい。
年金の繰り下げ受給とは
65歳から1ヶ月受給を繰り下げする(遅らせる)と月当たり0.7%、年当たり8.4%、最大10年間繰り下げをすると84%年金受給額が増加します。
例えば65歳で国民年金を月額7万円受給する権利があった場合、10年間繰り下げして75歳から受給すると70,000円✕(100%+84%)=月128,800円受給できます。
当然、65歳から74歳までは年金は受給できません。
年金の受給手続き
具体的な受給手続きの手順について見ていきます。
- 【65歳から受給する場合】
誕生日前日以降に年金請求書と添付書類(戸籍抄本や住民票等)を年金事務所に提出 - 【66歳以降に繰り下げ受給をする場合】
・「年金請求書」などの書類は提出しない。
「ねんきんダイヤル」では書類の提出がなかったことをもって、65歳で受給しない意思があると確認するそうです。
・日本年金機構から66歳から74歳までの間、毎年「年金見込額のお知らせ」が送られてくる。
・繰り下げ希望時期に「繰下げ請求書」を添付書類(戸籍抄本や住民票等)とともに年金事務に提出
・4歳までに受給を開始しなかった場合、75歳の誕生日の前日の属する月の1ヵ月前に「年金請求書」が送られてくる。
年金の受取り
- 年金請求書の提出から約1~2カ月後に「年金証書・年金決定通知書」が日本年金機構から送られてくる。
- 「年金証書・年金決定通知書」が届いてから1~2カ月後に、年金のお支払いのご案内(年金振込通知書・年金支払通知書または年金送金通知書)が日本年金機構から送られてくる。
- 年金は偶数月の15日に振り込まれる。
年金の「さかのぼり受給」と時効
年金の「さかのぼり受給」
例えば68歳に繰下げて受給を予定していたが、何らかの事情によりまとまったお金が必要になったとします。
その場合、65歳の時点にさかのぼって受給することができます。
65歳で100,000円/月の受給権があったとします。
68歳で3年間繰下げたので100,000円✕(100%+(8.4%✕3年))=125,200円/月受給できます。
68歳で65歳の時点にさかのぼると、68歳時点でのさかのぼり受給額は100,000円✕12ヶ月✕3年=360万円を受給
その代わり、それ以後終身の受給額は125,200円/月ではなく、100,000円/月になります。
年金額は100,000円/月になりますが、68歳でまとまったお金360万円が一度に手に入ります。
これは非常に助かると思いませんか。
このようになにかの事情により、急にお金が必要になったとき、さかのぼり受給をするとまとまったお金が手に入ります。
年金の「さかのぼり受給」の注意点
さかのぼり受給額と時効との関係
こんな例はどうでしょうか。
65歳で100,000円/月の受給権があったとします。
73歳で繰下げ受給をする予定でしたが、事情により「さかのぼり受給」をすることにした。
さかのぼり受給額は100,000円✕12ヶ月✕(73歳ー65歳)=960万円と年金額100,000円/月となりそうですが、65歳までさかのぼることはできません。
年金の受給権には5年以上経過した場合は消滅することになっています。
(一口メモを確認)
そのため、さかのぼり受給額は100,000円✕12ヶ月✕(73歳ー68歳)=600万円と年金額100,000円/月かと思っていましたが、そうでもないようです。
はっきりしなかったので日本年金機構の「ねんきんダイヤル」で確認したところ、5年間さかのぼり受給額は125,200円✕12ヶ月✕(73歳ー68歳)=7,512,000円と年金額125,200円/月になるそうです。
年金の受給権は、権利の発生から5年を経過したときは、時効によって消滅します。
(時効)国民年金法第百二条
年金給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から五年を経過したとき、当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以後に到来する当該年金給付の支給に係る第十八条第三項本文に規定する支払期月の翌月の初日から五年を経過したときは、時効によって、消滅する。e-gov 法令検索 国民年金法
(時効)厚生年金保険法第九十二条
保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したとき、保険給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から五年を経過したとき、当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以後に到来する当該保険給付の支給に係る第三十六条第三項本文に規定する支払期月の翌月の初日から五年を経過したとき、保険給付の返還を受ける権利は、これを行使することができる時から五年を経過したときは、時効によって、消滅する。
所得税、住民税
先程の例で73歳時点で68歳まで5年間さかのぼりした受給額は125,200円✕12ヶ月✕(73歳ー68歳)=7,512,000円、1年間の年金額が125,200円✕12ヶ月=1,502,400円、合計9,014,400円/年になります。
これに対する所得金額(雑所得)が9,014,400円/年✕95%ー145.5万円=7,108,680円
年金以外に所得がなく、医療費控除などの所得控除、税額控除がなかったとすると、所得税は(7,108,680円ー基礎控除48万円)✕税率20%+控除額427,500円=898,236円になります。
さらに住民税が均等割5,000円+(7,108,680円ー基礎控除43万円)✕税率10%=672,868円になり、合計1,571,104円になります。
この額は5年分なので1年分にすると314,220円なります
一方、73歳で繰下げ受給額の年額は10万円✕12ヶ月✕(100%+((73歳ー65歳)✕8.4%))=2,006,400円
これに対する所得金額(雑所得)が2,006,400円/年ー110万円=906,400円
同じ条件で所得税は(906,400円ー基礎控除48万円)✕税率5%=21,320円になります。
税金の他に国民健康保険料や介護保険料も増額になります。
(a)公的年金等の 収入金額の合計額 | (b) 割合 | (c)控除額 |
1,100,001円から 3,299,999円まで | 100% | 1,100,000円 |
3,300,000円から 4,099,999円まで | 75% | 275,000円 |
4,100,000円から 7,699,999円まで | 85% | 685,000円 |
7,700,000円から 9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
※ 公的年金等の収入金額の合計額が1,100,000円までの場合は、所得金額はゼロとなります。
課税される 所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 1 7,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
※ 復興特別所得税は含まれていません。
まとめ
「65歳の時点では75歳まで繰り下げ受給することを想定して下さい。事前に何歳まで繰り下げることを決めておく必要はありません。
お金が必要になったら、その時点で受給して下さい。
また、さかのぼり受給をすれば、まとまったお金を得ることもできます。ただし、さかのぼり受給をすると税金などが増えますので、年金事務所などと相談のうえ、おこなって下さい。」
参考までに記事で試算した内容のエクセルファイルを添付します。