国民年金を繰り下受給はお得なの?繰り下受給の考慮する事項8選

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現在60歳です。先月30年間務めていた会社を退職しました。昨今の低金利の時代に貯蓄では寂しいので、当面、退職金で生活費をまかない、国民年金の受給を遅らせて、1年当りの年金額を増やそうと思っています。
国民年金の受給を遅らせる、いわゆる繰り下げ受給についてを教えて下さい。

ザックリいって、現在の退職金などの現在保有している資産にどれだけ余裕があるかです。
66歳以上でも年金を受給しなくても、生活費に余裕があるのであれば、その年齢まで国民年金の繰り下げをするのがいいです。
50代の人、老後の資産形成の前に財産や負債の現状把握できていますか」の「財産現状把握表」と
【不安】老後資金の準備はできていますか?ライフプランで安心な老後を」の「ライフプラン表」を事前に作成して下さい。
現在の資産状況と将来の人生設計が数値で示されないと国民年金の受給についてあれこれ言えません。
また、国民年金は制度が複雑で個々によって事情が変わってきます。繰り下げ受給にあたって考慮する点について説明します。

目次

国民年金の繰り下げ受給

国民年金の繰り下げ受給とは、国民年金の基準受給年齢である65歳から、受給開始時期を遅らせて給付する代わりに、1年あたりの年金額を増やす制度です。

2020年5月に法改正により、70歳までの繰り下げであったものか75歳まで、遅らせることができるようになりました。つまり、最大10年間繰り下げが可能になります。

1カ月受給開始を遅らせるごとに年金を0.7%増額します。
0.7%×10年×12ヶ月=84%最大で増額です。

なお、実施は2022年4月からになります。

繰り下げ受給で考慮しなければいけないこと

繰り下げ受給の制度はそれほど難しくはないのですが、繰り下げ受給するには次の8つのことを考慮しなければいけません。

  1. 繰り上げ期間は年金支給なし
  2. 加給年金・振替年金
  3. 税・社会保険料
  4. 遺族年金
  5. 特別支給の老齢厚生年金
  6. 在職老齢年金
  7. 年金のさかのぼり受給
  8. 年金財政

繰り上げ期間は年金支給なし

当然ですが、繰り上げ期間中に年金の支給はありません。
65歳で受給する年金額と繰り下げて受給する年金額の損益分岐年齢は繰り下げ「受給年齢+12」です。
70歳で受給したら82歳で、繰り下げて受給したほうが、総年金受給額が多くなります。

加給年金・振替年金

加給年金とは本人が厚生年金に20年以上加入していて、年下の配偶者がいると、その配偶者が65歳になるまで年390,900円の年金を、追加して受給することができます。

しかし繰り下げ受給をすると、この加給年金は繰り下げ期間中は支給されません。それを避けるためには基礎年金部分だけを繰り下げ受給して、厚生年金部分は繰り下げ受給しない方法があります。

配偶者が65歳になると加給年金は支給されません。それに変わって一定の条件のもと配偶者の老齢基礎年金に振り替えて給付されます。

ただし加給年金・振替年金とも配偶者が厚生年金に20年以上加入しているか、配偶者の年収が850万円以上の場合は支給されません。

税・社会保険料

繰り下げによって年金額が増加しますので、所得税・住民税や国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料が増えます。年金額、時期、場所によって変わってきますので、一律には計算できません。

概算ですが、年金額の約1割が所得税・住民税や国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料の合計額になります。

【注意点】

  • 国民健康保険料は74歳まで75歳からは後期高齢者医療保険料になります。
  • 所得税・住民税や国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料は年金から天引きされます。
    「なぜ案内より口座入金額が少ないのか?」とならないように

遺族年金

繰り下げた本人が亡くなった場合、遺族年金が支給される場合があります。
遺族厚生年金は亡くなった本人の老齢厚生年金の額をもとに計算されますが、その本人の老齢厚生年金の額には繰り下げ分は含まれない。

特別支給の老齢厚生年金

年金支給基準年齢を60歳から65歳に変更した折に、緩和措置として特別支給の老齢厚生年金を受給できます。繰り下げがなかったものとして計算されます。

年齢によって特別支給の老齢厚生年金が異なります。

例えば63歳から特別支給の老齢厚生年金を受給して、68歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給する場合、63歳から64歳までが特別支給の老齢厚生年金が、68歳から終身老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給することになります。

つまり65歳から67歳の間、無年金になりますので注意しましょう。

在職老齢年金

65歳以降も定額以上の給与があると年金が減額されます。これを在職老齢年金といいます。
繰り下げの対象は減額後の額になり、繰り下げ額が目減りします。

年金のさかのぼり受給

例えば68歳で受給する場合、繰り下げにするか65歳にさかのぼって受給するか選択することができます。さかのぼって受給する場合は、増額なしの未支給分を一括して受給できます。

急にお金が必要になった時に検討して下さい。
ただ、さかのぼり受給した年は所得が増えますので、所得税などが増税になることに注意する必要があります。年金財政

厚生労働省の2019年財政検証結果によると、60歳の人が90歳になる30年後の年金の給付水準は、2割程度低下すると試算されている。
これは不安が高まる報告であり、公的年金を有効に活用しながらも、貯蓄・投資をして老後資金を捻出する必要があります。

結論

繰り上げ受給の年増加率は 0.7% ✕ 12ヶ月 = 8.4% です。投資信託の利回りで 8.4% を出すのは相当きついのではないでしょうか。

一方、繰り下げにより年金額が増加することにより、税金などが増えますので、損益分岐年齢は「受給年齢+12」ではなく、「受給年齢+15」程度は見ておいたほうがいいでしょう。
70歳で受給したら85歳、75歳で受給したら90歳です。
なぜなら税金などが天引きされて、年金の手取り額は1割程度減額されるからです。

このことから、繰り下げて受給するにはまずは健康であることが一番だということです。年金の繰り上げ受給のリスクは健康です。
そのうえで、66歳以上でも年金の受給が必要なくても生活ができるのであれば、その年齢まで国民年金の繰り下げをするのがベストの対策です。

年金財政も大きなリスクですが、個人ではなんともできないものです。年金財政のリスクがあるからといって、年金を避けるのではなく最大限に活用することを考えましょう。

まとめ

国民年金の繰り下げ受給の前に「財産現状把握表」と「ライフプラン表」を作成して繰り下げ受給の判断材料にしましょう。

国民年金の繰り下げ受給とは国民年金の基準の受給年齢は65歳ですが、繰り下げ受給をおこなうと受給開始時期が遅れる代わりに年金が増額する制度です。

繰り下げ受給で税金などが増加しますから考慮しなければいけません。

繰り上げ受給の年増加率は8.4%です。投資信託の利回りで 8.4% を出すのは相当きついです。
そのことを考えると、自己資金で生活費がまかなえる年齢が65歳以上であれば、その年齢まで国民年金の繰り下げをするのがベストの対策です。

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