「今度、息子が結婚します。結婚資金を援助するつもりです。贈与税はかかるのでしょうか?」このような質問を解決します。
この記事を読めば贈与税について理解が深まります。
安心して息子さんに結婚資金を出してあげましょう。
贈与税については書籍、ネット、税務署のパンフレット等いろいろな情報がありますが、すべて法律等を説明したものです。
面倒でも一度は法律の条文をあたってみましょう。
この記事は法律等の条文を多く引用しました。これは一次情報である法律をまず確認することが確かであり、重要であるからです。
私も以前、結婚資金は高額になり贈与税はかかるのだろうなと思っていました。
周りに聞いてもはっきりと答えることができる人は少なかったです。
そのときにいろいろ聞いたこと、調べたことをまとめて記事にしました。
質問の結論を言います。結婚資金は常識の範囲であれば贈与税が課税されることはありません。
心配しないで息子さんの結婚を祝って上げて下さい。
「贈与」とは
まずは贈与の定義です。
無償で財産を与え相手が受諾したら、その行為が贈与です。
結婚資金として無償で子供に与えたら、当然贈与になります。
大事なのは「贈与をしたからといって必ずしも贈与税が課税されるとはかぎらない」ということです。
ポイントは相手がもらったことを認識しているかです。
(贈与)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000073_20180401_430AC0000000007&openerCode=1#2
民法第五百四十九条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
贈与税の基礎控除
一年間に贈与した額のうち、110万円は用途にかかわらず課税されません。
一年当たり受贈者一人当たり基礎控除110万円です。
相続税法では60万円になっていますが、時限立法である租税特別措置法で平成13年より110万円になっています。
(贈与税の基礎控除)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000073_20180401_430AC0000000007&openerCode=1#240
相続税法第二十一条の五
贈与税については、課税価格から六十万円を控除する。
(贈与税の基礎控除の特例)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332AC0000000026
租税特別措置法第七十条の二の四
平成十三年一月一日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については、相続税法第二十一条の五の規定にかかわらず、課税価格から百十万円を控除する。
〜 (以下省略) 〜
贈与税の非課税財産
ただし直系血族への贈与で生活費や教育費で通常の日常生活を営むのに必要な費用については課税されません。このなかには結婚費用も含まれます。
そもそも直系血族(子や孫)の生活費や教育費は贈与税の対象外ということです。
(贈与税の納税義務者)
相続税法第一条の四 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、贈与税を納める義務がある。
〜 (以下省略) 〜
(贈与税の非課税財産)
相続税法第二十一条の三 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
一 (省略)
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
〜 (以下省略) 〜同居、協力及び扶助の義務)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#2732
相続税法第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
(扶養義務者)
相続税法第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
(「生活費」の意義)
相続税法基本通達21の3-3 法第21条の3第1項第2号に規定する「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く。)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除く。)を含むものとして取り扱うものとする。(昭50直資2-257改正、平15課資2-1改正)(「教育費」の意義」)
相続税法基本通達21の3-4 法第21条の3第1項第2号に規定する「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らないのであるから留意する。(平15課資2-1改正)(生活費及び教育費の取扱い)
相続税法基本通達21の3-5 法第21条の3第1項の規定により生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)(生活費等で通常必要と認められるもの)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/10.htm#a-21_3_4
相続税法基本通達21の3-6 法第21条の3第1項第2号に規定する「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとする。(平15課資2-1改正)
生活費又は教育費のうち通常必要と認められるものの具体例
- 生活費
子供の生活費全般
アパート家賃等 - 結婚費用
結婚式・披露宴の費用
結婚後の生活費用等 - 出産費用
分娩・入院費
新生児の育児費用等 - 教育費
学費・教材費・文具費・修学旅行費等
参考 国税庁「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」
の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」
具体例があっても、他にいろいろなケースがあります。「どうなんだろう?」と思うこともありますが、キーワードは「通常必要と認められるもの」「社会通念上適当と認められる範囲の財産」です。
社会の常識の範疇であれば非課税になるということです。つまり、「いくらなんでも多いだろ」という金額でない限り課税されません。迷うことがあれば、最終的には税理士等に相談して下さい。
結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税制度
租税特別措置法第70条の2の3に定めれれており、正式には「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」と言います。
これは若者の経済的な負担になっている結婚・出産・子育てを、税の面から支援する制度です。概要は以下のとおりです。
- 非課税限度額
1,000万円 - 対象者
受贈者:20歳以上50歳未満の直系卑属(子や孫など)
贈与者:受贈者の直系尊属(父母、祖父母など) - 手続き
受贈者名義の口座を開設
受贈者から贈与者に一括贈与入金
金融機関より「結婚・子育て資金非課税申告書」を税務署長に提出 - 条件
受贈者の前年の所得額が1,000万円以下
教育資金の一括贈与に係る非課税制度
参考までに教育資金についても同じような制度があります。
租税特別措置法第70条の2の2に定めれれており、正式には「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」と言います。
高齢者世代の資産を教育資金として、若者世代に効率的に移転するために、税の面から支援する制度です。概要は以下のとおりです。
- 対象経費
入学金、授業料、学習塾代、習い事代等 - 非課税限度額
1,500万円/人(内学校以外の経費は500万円/人) - 対象者
受贈者:30歳未満の直系卑属 (子や孫など)
贈与者:受贈者の直系尊属(父母、祖父母など) - 手続き
受贈者名義の口座を開設
受贈者から贈与者に一括贈与入金
金融機関より「教育資金非課税申告書」を税務署長に提出 - 条件
受贈者の前年の所得額が1,000万円以下
まとめ
贈与税には一年間でも受贈者1人当たり110万円の基礎控除があります。
基礎控除とは別に、常識の範囲でその都度贈与するのであれば自分の子どもの生活費、結婚資金には贈与税は課税されません。
それ以外に一括で贈与する場合は非課税制度はありますが、あまりメリットは感じられません。
いかがでしょうか。結婚資金も含めて子どもの養育費には贈与税は課税されないことが理解できたと思います。
結婚資金は常識の範囲であれば贈与税が課税されることはありません。心配しないで息子さんの結婚を祝って上げて下さい。