電子書籍の出版が増えています。以前紙で自費出版すると相当な経費がかかった。
現在は電子書籍であれば Amazon などで費用をほとんどかけずに出版できる。
そんな折、Kindle本は相続できるのかな?
Amazon の Kindle本を100冊ほど持っています。これからも増加していくでしょう。
名著といわれる本もあります。息子にも読んでもらいたいのです。
そんな想いが芽生えてきて、調べた結果を書き留めました。
先に結論をいうとアカウントの名義を変更することで Kindlel 本は相続できます。
書籍の販売状況
紙出版 | 電子出版 | 合 計 | 電子出版の割合 | |
2015年 | 15,220 | 1,502 | 16,722 | 9% |
2016年 | 14,709 | 1,909 | 16,618 | 11% |
2017年 | 13,701 | 2,215 | 15,916 | 14% |
2018年 | 12,921 | 2,479 | 15,400 | 16% |
2019年 | 12,360 | 3,072 | 15,432 | 20% |
2020年 | 12,237 | 3,931 | 16,168 | 24% |
2021年 | 12,080 | 4,662 | 16,742 | 28% |
まず、 Kindle 本などの電子書籍がどれだけ売れているかを調べてみました。
上の表は、「全国出版協会・出版科学研究所」の調査データです。電子出版の出版販売額割合はここ7年間毎年2〜4%程度増加しています。
2021年現在、電子出版の販売額は4,600億円を超えて、出版販売額割合は28%を占めています。
今後ますます電子書籍が増加するトレンドです。
最王手の Kindle が相続できるかどうかは、気になってくるところです。
Kindle サービス
次に普段は何気なくKindle 本を購入しています。どのような決め事があるかなどまったく気にはしていません。
どんな決め事になっているか、遅まきながら改めて調べてみました。下が「AMAZON KINDLEストア利用規約」から関係箇所を抜粋したものです。
AMAZON KINDLEストア利用規約
Kindleコンテンツを回数の制限なく閲覧、使用、および表示する非独占的な使用権が付与されます(定額購読コンテンツの場合は、お客様が定額購読プログラムの有効な会員である限り。)。Kindleコンテンツは、コンテンツプロバイダーからお客様にライセンスが提供されるものであり、販売されるものではありません。
Kindleコンテンツまたはその一部に対するいかなる権利も第三者に販売、借用、リース、配信、放送、サブライセンス、ないしは別の方法で譲渡してはならないものとします。
相続について直接書かれているところはありませんでした。
コンテンツの購入は紙の本とは違い、コンテンツを閲覧できる権利(使用権)が与えられたものであるとしています。
さらに、コンテンツの譲渡はできないとあります。譲渡できないということは相続できないということです。
アカウント設定の変更
コンテンツの譲渡はできませんが、Amazon アカウントの変更は可能です。
名前、Eメールアドレス、パスワード、支払い方法などが更新できます。
具体的にはアマゾンにログイン後「〇〇さんアカウント&リスト」「アカウントサービス」でいろいろ変更が可能です。
これはどういうことでしょうか?
Kindle コンテンツは譲渡できないが、Amazon アカウントは譲渡できる。譲渡できるということは相続もできるということです。
つまりコンテンツを別のアカウントに移動することはできません。著作権法でいえば当然ですね。
しかし人の移動はできるということです。
相続する場合はコンテンツの移動であろうが、人の移動であろうが、どちらでも構いません。相続人がコンテンツを見ることができればいいのです。
Amazon のホームページを見た限りは上記の結論になるのですが、なにかしっくりこないので Amazonのサポートにアカウントの変更で相続できるか問い合わせてみました。質問
「Kindle 本がたくさんあります。息子に譲渡か相続したいです。AMAZON KINDLEストア利用規約では譲渡はできないことになっています。Amazonアカウントの変更で実質的に譲渡できますが、譲渡・相続目的でアカウントを変更できますか?」
質問
「Kindle 本がたくさんあります。息子に譲渡か相続したいです。AMAZON KINDLEストア利用規約では譲渡はできないことになっています。Amazonアカウントの変更で実質的に譲渡できますが、譲渡・相続目的でアカウントを変更できますか?」
回答
「アカウントの変更はできますが、アカウントの統合はできません。」
アカウントの統合とは被相続人(死亡者)のアカウントを相続人のアカウントと一緒にすることです。
アカウントの統合はコンテンツの移動が必要なのでだめなのでしょうね。
法律上の解釈
財産(所有権や債権など)はすべて相続できるのが原則ですが、いくつか例外があるのですが、関係するものとして「一身専属」があります。
民法第896条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
「一身専属」とは被相続人(死亡者)が個人として特別に有していた権利や資格のことです。
そのため相続できないことになっています。
具体的には士業資格、医師免許、運転免許資格、年金受給権、著作権などです。
Kindle本が譲渡(相続)できないのはこの「一身専属」のためと一般にいわれていますが、「一身専属」なのは著者であって被相続人(死亡者)ではありません。
『一身専属的契約だから相続できません』というのは適切でないです。
やはり著作権を保護するために譲渡できないと、理解したほうがしっくりきます。
そうするとアカウントを変更することは著作権違反にならないのか?
結論はでていませんが、とりあえず Kindle 本は相続できることがわかったので、よしとします。
まとめ
Kindle 本は譲渡(相続)できません。
が、Amazonアカウント名義を変更することで譲渡(相続)することができます。