【書評】『運動脳』アンデシュ・ハンセン 著

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60歳を超えても日々ランニングにのめり込んでいます。マラソン大会に出続けていますが、記録はピークから見ると大分悪くなってきました。

走る気はあるのですが、年のことを考えて走る量を減らそうかと思っていました。
そんな折に読んだのがこの本『運動脳』です。

  • 「運動することが薬を飲むのと同等以上の効果がある。」
  • 「薬には副作用はあるが、運動には副作用はほぼない。」
  • 「ウオーキングよりランニングのほうが効果が大きい。」
  • 「ウエイトトレーニングより有酸素運動であるランニングを」

このような話を聞くと今まで走ってきたことが、全肯定された気になりました。
こんな私が読んで気がついた点をお話したいと思います。

私のようなランニングは本当に脳と体によいのだろうかと疑問に思っている方だけではなく、勉強や仕事のために集中力を高めたい方、ストレスやうつに悩んでいる人、最近物忘れが多くなったと気にしている方に一読していただきたい一冊です。

目次

本の基本情報

書 名 『運動脳
著 者 アンデシュ・ハンセン

訳 者 御舩 由美子
発行所 株式会社サンマーク出版
発行日 2022年9月10日電子版発行

著者紹介

著 者 アンデシュ・ハンセン

精神科医。
スウェーデンのストックホルム出身。
カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)にて医学を、ストックホルム商科大学にて企業経営を修めた。
現在は上級医師として病院に勤務するかたわら、多数の記事の執筆を行っている。
これまでに、『ダーゲンス・インドゥストリ』(スウェーデンの経済新聞)、『SvD』(スウェーデンを代表する朝刊紙の1つ)、『レーカレ・ティードニング』(スウェーデンの医療関係者向けの雑誌)、『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』などに医学研究や医薬品に関する記事を2000件以上寄稿。
ラジオやテレビでも情報を発信し、とくにテレビ番組『科学の世界』への出演で有名。
自身のテレビ番組もスウェーデン国内で持っている。
講演活動も精力的に行っている。精神科医として活動するかたわら、テニス、サッカー、ランニングに励み、週に5日、少なくとも1回45分取り組むようにしている。
主な著書に『スマホ脳』(新潮社)などがある。

本の目次

第1章 現代人はほとんど原始人
第2章 脳から「ストレス」を取り払う
第3章 「集中力」を取り戻せ
第4章 うつ・モチベーションの科学
第5章 「記憶力」を極限まで高める
第6章 頭のなかから「アイデア」を取り出す
第7章 「学力」を伸ばす
第8章 健康脳
第9章 最も動く祖先が生き残った
第10章 運動脳マニュアル

キーセンテンスの解説

身体を動かせば、たちまち心と身体が健康になり、脳の働きもよくなる。そして運動を習慣にして長く続けるほど、その効果のすばらしさが実感できるだろう。

運動には薬やセラピーに匹敵する以上の効果があるという。
これは神経科学が導き出した答えだと。

機能的にすぐれた脳とは、細胞がたくさんある脳でも、細胞同士がたくさんつながっている脳でもなく、各領域(たとえば前頭葉や頭頂葉)がしっかりと連携している脳なのだ。
身体を活発に動かせばその連携を強化できる。

子供の時の自転車に乗れるようになるには、何回も転ぶことで体に染み付きます。
ピアノやパソコンのブラインドタッチも何回も練習することで、キーを見なくても自然に打てるようになります。

「連携が強化できる」はこのような例から実感として分かります。

身体を活発に動かすと脳の血流が増える。前頭葉にたちまち大量に血液が流れ、機能を促進する。さらに、運動を長期にわたって続けると、やがて前頭葉に新しい血管がつくられ、血液や酸素の供給量が増え、それによって老廃物がしっかり取り除かれる。

運動すると脳の血行が良くなる。脳に血液がくまなく行き渡り、気持ちをスッキリさせるのです。

世間に広く知られていない理由──それは、きわめて単純なことである。「お金の問題」なのだ。

運動することで健康になれるということがなぜ、社会に広まっていないのか?の答えです。

運動をすれば健康になれると言っても、薬やサプリメントが売れるわけではないからです。
ものが売れないと商売にならない。商売で利益を上げたい人は「健康には運動がいい。」とは誰も言わないのです。

毎日、意識的に歩くと認知症の発症率を40%減らせる。

認知症の一番の薬は、「歩くこと」なのだ。

びっくり仰天の数字です。本当なら一生懸命に歩かない理由はありません。

運動を長期にわたって続けると、やがて前頭葉に新しい血管がつくられ、血液や酸素の供給量が増え、それによって老廃物がしっかり取り除かれる。

辛抱強く続け、途中であきらめないことが肝心だ。

運動を習慣にしている人の前頭葉は、脳のほかの領域との連携が強くなり、残りの領域にも影響を与えて制御できるようになる。

継続が重要です。1回で疲れ果てるような運動はしないようにすることです。
次も運動したいという気にならないと習慣化できません。

運動は、副作用が一切ない薬だ。少しだけ気持ちが滅入っている人でも、深い苦悩を抱えている人でも、たいていは運動をすれば晴れやかな気分になれるのである。

薬と違って副作用がないのはすごいです。運動しない理由は見つかりません。

ストレスに対する反応は、身体が運動によって鍛えられるにしたがって徐々に抑えられていくのだ。

運動することは気分転換以上に、心のもやもやの解消になるようです。

コンピュータゲームやアプリが提供する様々な認知トレーニングは、確かにゲームそのものは上達しても、とくに知能が高くなったり、集中力や創造性が改善されたり、あるいは記憶力が向上したりといった効果はないことがわかった。

スタンフォード大学などの専門家による研究調によると、脳トレゲームやクロスワードパズルは役に立たないと。これは驚愕です。

なぜ私はこのような本を書いたのか?

何より大切なことは身体を動かすことだという事実を、現代の神経科学が教えてくれたからだ。

これを語らずして、いったい何を語ればいいだろうか。

脳や体にとって「身体を動かすこと」が最も大切である。このことが著者が首尾一貫して言いたかったことです。

最後に

ランニングが脳や体にこんなにいいものとは思いませんでした。
この本を読んで走る量を減らそうかと思っていましたが撤回します。
いくつになっても継続できる範囲でランニングを続けていきます。

ただ1つ気になる点があります。
運動が脳によい根拠が私にはスッキリと理解できませんでした。

根拠を説明するとどうしても専門的になり専門外には理解が困難になります。著者が最も苦心した点かもしれません。

そのような不満は一部残るものの、全体的には私のランニングに対する想いを後押ししてくれる大切な本の一冊です。

最後に著者のアンデシュ ハンセン様、別の角度から脳についてご教授いただけることを期待しております。
ますますのご活躍をご祈念申し上げます。

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