老齢年金の「特例的な繰下げみなし増額制度」による受給は要注意

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国の統計では2020年度で、老齢基礎年金を繰下げ受給した70歳以上の人は、3万1千人(0.5%)で割合を見るとわずかですが、毎年確実に増加しています。

公的年金が破綻するリスクは金融投資のリスクから見ると非常に小さいです。
60代は株や投資信託などの投資は控えて、いかに年金を増やすかを検討して下さい。

手っ取り早く年金を増やす方法は繰下げ受給をすることです。
早く年金がほしいという人でもとりあえず繰下げをしておいて、どうしてもお金が必要になってきたときに、「特例的な繰下げみなし増額制度」を活用すると、過去さかのぼって未払い分を受給することができます。

繰下げ受給と「特例的な繰下げみなし増額制度」を事前に理解しておくことは堅実な収入増加の方法です。

年度別老齢年金繰上げ・繰下げ受給状況

目次

老齢年金の受給

公的年金である老齢年金は基本65歳から受給しますが、 個々の事情によりいくつかの受給方法があります。

【老齢年金の受給方法】

  • 65歳から受給
  • 繰上げ受給
  • 繰下げ受給
  • 「特例的な繰下げみなし増額制度」による受給

65歳から受給

老齢年金は65歳から受給することを原則として制度ができています。

受給額には厳密な計算式があります。
詳細を確認する場合は日本年金機構の「老齢年金ガイド」を見てください。

簡単に言うと年金加入月数の割合によって算出されます。
繰上げ受給、繰下げ受給は65歳からの受給額を増減して算出します。

繰上げ受給

本人の希望により60歳から65歳になるまでの間で年金を受給することができますが、年金額が減額されます。

【繰上げ受給減額率】

  • 昭和37年(1962)4月1日以前生まれの人
    受給減額率 0.5%/月
  • 昭和37年(1962)4月2日以降生まれの人
    受給減額率 0.4%/月

【事例】

  • 昭和39年生まれ
  • 65歳で受給できる年金が100万円/年
  • 63歳で受給

100万円/年✕100%ー(受給減額率 0.4%/月✕(65歳ー63歳)✕12ヶ月)=90万4千円/年

65歳になったら100万円/年受給できるわけではありません。
一度繰下げをすると取り消しができないため、生涯減額された年金を受給することになります。

受給開始が早まるのは有り難いことですが、どうしてもお金が必要である場合を除いて、繰上げ受給を選択することは後々心配になってきます。
できれば繰上げ受給を避けたほうが賢明です。

繰下げ受給

本人の希望により66歳以降75歳になるまでの間で年金を受給することができます。
繰上げた月数によって年金額が増額されます。

【繰下げ受給増額率】

  • 受給増額率 0.7%

【事例1】

  • 65歳で受給できる年金が100万円/年
  • 68歳で受給

100万円/年✕100%+(受給増額率 0.7%/月✕(68歳ー65歳)✕12ヶ月)=125万2千円/年

生涯増額された年金を受給することができます。

【事例2】

  • 65歳で受給できる年金が100万円/年
  • 73歳で受給

100万円/年✕100%+(受給増額率 0.7%/月✕(73歳ー65歳)✕12ヶ月)=167万2千円/年

生涯増額された年金を受給することができます。

では何歳で受給するのがお得なのかと疑問が生じます。
結論をいうと受給した年の12年後に65歳受給総額と同額になります。
73歳で受給すると90歳で65歳受給総額と同額になりますから90歳以上生きているとお得になります

これについては次の記事で説明していますので参考にして下さい。

繰下げ受給の詳しい内容は次の記事を参考にして下さい。

「特例的な繰下げみなし増額制度」による受給

66歳から75歳の繰下げ最中で、繰下げ受給をせずに5年以内の期間を戻って、戻った期間の年金を一括で受給する方法です。

次の人が対象になります。

  • 昭和27年4月2日以降生まれの人
  • 老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日以降の人

文章にするとこのようにややこしい言い方になるので具体的な事例で説明します。

【事例1】

  • 65歳で受給できる年金が100万円/年
  • 68歳で65歳に戻って受給

未払い受給額(65歳から67歳分)が100万円/年✕3年と今後の受給額100万円/年、合計400万円を63歳の1年間に受け取ることができます。

【事例2】

  • 65歳で受給できる年金が100万円/年
  • 73歳で68歳に戻って受給

「年金受給の時効は5年」のルールがあるため最長5年までしか戻ることができません。

未払い受給額(68歳から72歳分)が125.2万円/年✕5年と今後の受給額125.2万円/年、合計751.2万円を63歳の1年間に受け取ることができます。

このことについては日本年金機構の「老齢年金支給繰下げ請求にかかる注意点」が参考になります。

また非常に気になるのが「老齢年金支給繰下げ請求にかかる注意点」問12の回答なお書き部分です。
抜粋します。

なお、過去分の年金を一括して受給することにより、過去にさかのぼって医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金、受給した年金生活者支援給付金や傷病手当金に影響がある場合があります。

年金を一括受給することにより所得が増えることについては、増えた年の所得とすべきと個人的には考えていましたが、そうではないようです。
例えば所得税の場合であれば、この一文を読むと過去にさかのぼって修正申告をする必要がありそうです。

修正申告は所得に誤りがあったときにおこなうもので、「特例的な繰下げみなし増額制度」は名称のとおり年金制度の1つとしてあるもので所得の誤りではありません。

一般に修正申告のほうが税額は少なくなるのでいいのかもしれませんが、複数年分を修正しなければいけないことや、住民税や健康保険料も変更になることを考えると非常に面倒です。

最寄りの年金事務所の職員の話では延滞税まで加算されるとのこと、何か納得できない話です。

まとめ

繰下げ受給と「特例的な繰下げみなし増額制度」を事前に理解しておくことは堅実な収入増加の方法です。

繰下げると月当たり0.7%増額します。
75歳まで繰り下げると0.7%✕10年✕12ヶ月=84%も増額します。

繰上げ中にまとまったお金が必要になったときは「特例的な繰下げみなし増額制度」を活用すると過去にさかのぼって、さかのぼった年数分の年金がまとまって受給することができます。

年金の時効は5年なのでさかのぼるのは5年までです。

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