退職金は確定申告の必要があるのか?必要な場合の手順を説明します。

お金・財産

昨年退職金の収入がありました。サラリーマンなので確定申告はしたことがありません。
確定申告をする必要があるのでしょうか?

ほとんどの場合必要ありません。ただ2つのケースで確定申告が必要になる場合があります。
1つは会社に必要書類を提出しなかった場合、もう1つは退職金以外の事情により確定申告をすれば、節税できる場合です。
今までのモヤモヤを解決しましょう。

私はファイナンシャルプランナー2級の資格を2019年に取得しました。
現在は正直なところペーパードライバー状態です。
退職所得についていろいろ質問がありましたので、改めて国税庁の資料を調べました。

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所得税の概要

所得税とは個人が1月1日から12月31日までの一年間に得た所得(利益)に対して課税する税金です。
簡潔に示すと下記の式のとおりになります。

所得税 =(所得の合計金額 ー 所得控除)× 税率

所得控除とは

所得控除」とは個々の事情を考慮するために、「所得の合計金額」から差し引くものです。つまり、特別な事情がある場合に所得税が軽減できる制度です。

所得控除」には何種類かあり、「源泉徴収」で控除できるもの、できないものがあります。控除できないものは確定申告することにより控除することができます。

源泉徴収」というのは、社員に代わって会社が給与所得等を税務署に納付する制度です。

退職所得とは

退職所得」とは、退職により勤め先の会社等から受ける退職金等から生じる所得のこと。計算式は以下のとおりになります。

退職所得 = (退職金等収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2

「退職所得の受給に関する申告書」と「退職所得の源泉徴収票」

退職所得の受給に関する申告書」を事前に勤め先に提出した場合は、退職所得の金額に応じて源泉徴収され、一般に確定申告は必要ありません。

一方で、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に未提出の場合、退職金の20%が所得税として源泉徴収されます。ほとんどの場合、確定申告をすれば所得税の一部が戻ってきます。

源泉徴収」というのは、社員に代わって会社が給与所得等を税務署に納付する制度です。
退職所得金額の計算は給与所得の計算とは異なるため、別に「退職所得の源泉徴収票」が発行されます。

退職金は、会社が計算した退職所得税を控除した金額が振り込まれます。

事例(給与・退職所得がある場合)

所得税の説明を細かくするとポイントがわかりにくくなるので、起こりうる可能性が高い事例で説明します。

設定条件 前年の3月に退職、給与と退職金以外の収入はないものとする。

    区  分金 額  備  考
1月〜3月の給与90万円
退職金額1,500万円勤続年数25年
給与・退職金以外の収入0円
医療費50万円
保険金等補填される金額0円

給与所得の計算

給与所得金額は下記の式で求められます。
給与所得金額 =収入金額 ー 給与所得控除額  
=90万円 ー 55万円 (※)
=35万円

給与所得控除」とは収入金額から一定額を差引く額のことで、個人事業主の場合の、経費に相当します。給与所得控除額は下記のとおりです。

給与所得控除額計算表(令和2年分以降)
       収入金額  給与所得控除額 備考 
1,625,000円まで550,000円(※)
1,625,001円から1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から10,000,000円まで収入金額×10%+1,100,000円
10,000,001円以上1,950,000円(上限)
収入金額は源泉徴収票の支払金額のことです

給与所得の税額 = 35万円 ✕ 5% = 17,500円になります。

所得税の速算表(令和2年分以降)
課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

退職所得の計算

退職所得は分離課税のため給与所得と分離して税額を計算します。
以下の3つのケースがあります。

  1. 退職所得の受給に関する申告書」が未提出、確定申告をしない場合
  2. 退職所得の受給に関する申告書」を提出、確定申告をしない場合
  3. 確定申告をした場合(「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無を問わない)
1.「退職所得の受給に関する申告書」が未提出、確定申告をしない場合

退職金額の20%の所得税額が源泉徴収されます。
退職所得の税額 = 退職金額1,500万円 × 20% =300万円になります。

*確定申告により還付できます。

2.「退職所得の受給に関する申告書」を提出、確定申告をしない場合

退職所得金額 =(退職金額 ー 退職所得控除額)× 1/2
=(1,500万円 ー 1,150万円)× 1/2
=175万円

なお、退職所得控除額(令和2年分)は下記のとおりです。勤続年数は25年ですから
退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × ( 勤務年数25年 – 20年)
        = 1,150万円 になります。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤務年数
(80万円に満たない場合は80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (勤務年数 – 20年)

退職所得の税額も「所得税の速算表(令和2年分以降)」を使います。
退職所得の税額 = 175万円 ✕ 5% = 87,500円になります。

3.確定申告をした場合(「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無を問わない)

退職所得金額は 2 と同じで175万円ですが、確定申告をすることで医療費控除ができます。
1、2は確定申告をしていないので医療費控除ができません。

医療費控除額= 医療費 ー 保険金等補填される金額 ー 10万円または総所得金額等×5%のいずれか低い額
=50万円 ー 0万円 ー 10万円
= 40万円

まず給与所得金額から控除します。
課税給与所得金額 = 給与所得金額 ー 医療費控除
=35万円 ー 40万円=▲5万円
マイナスにはならず
課税給与所得金額 = 0万円 になります。

給与所得金額から医療費控除金額を差し引き、引き切れない控除金額がある場合、退職所得金額から差し引きます。
課税退職所得金額 = 退職所得金額 ー 引ききれなかった控除金額
=175万円 ー 5万円 = 170万円

退職所得の税額も「所得税の速算表(令和2年分以降)」を使います。

退職所得の税額 = 170万円 ✕ 5% ✕ = 85,000円になります。

医療費控除

医療費控除は所得控除の1つで本人または本人と生計を一にする配偶者や親族等の医療費が一定額を超える場合、医療費控除を受けることができます。
医療費控除の額は下記により計算します。控除額は200万円が上限になります。

医療費控除額= 医療費 ー 保険金等補填される金額 ー 10万円または総所得金額等×5%のいずれか低い額

まとめると以下のとおりの税額になります。

給与所得の税額退職所得の税額合 計
1.「退職所得の受給に関する申告書」が未提出
確定申告をしない場合
17,500円3,000,000円3,017,500円
2.「退職所得の受給に関する申告書」を提出
確定申告をしない場合
17,500円87,500円105,000円
3.確定申告をした場合
(「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無を問わない)
0円85,000円85,000円

なお、所得税の他に復興特別所得税も併せて納付する必要があり、納税額は下記のとおりです。
復興特別所得税額 = 所得税額 × 2.1%

まとめ

今回の事例では「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、35倍弱の税負担になりました。必ず確定申告をしましょう。

退職所得の受給に関する申告書」を提出していればほとんどの場合は確定申告の必要はありません。

今回の事例ではもっとも起こりやすい事例として、医療費控除額を30万円としました。

まとめとして
・「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合は、必ず確定申告をすること
・「退職所得の受給に関する申告書」を提出していても、多額の医療費があったなど
いろいろなケースがあり、念のために所得税の再計算をすること


今回はできるだけ具体的にわかりやすく説明することを重視しました。そのために体系だった説明については、相当省略しております。体系的な説明は下記のURLを参考にして下さい。

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