現在64歳です。年金の受給年齢を75歳まで繰り下げることができるようになったと聞きました。
1年当たりの年金が増えるそうですが、その内容を教えて下さい。
それから何歳で受給すべきかアドバイスもお願いします。
ザックリ結論をいいますと、「働けるうちは働いて下さい。」です。
働こうという気があるうちは年金を受給せず、70歳くらいまで受給開始を遅らせることで、一生涯の年金額を最大にする有効な選択肢になると思います。
「繰り下げ受給」が75歳まで改正
2022年4月から公的年金の受給開始を75歳に繰り下げることが可能になった。2022年4月から、年金の「繰り下げ受給」の受給開始年齢の上限が、従来の70歳から75歳に延長されます。
改正前
通常65歳からとなる年金の受給開始時期を、66歳から70歳までの間に遅らせることによって、年金受給額が月0.7%増額、1年で8.4%増額になります。
70歳で受給すると5年間遅らせることになるので、年間受給額が5年✕8.4%=42%増加します。
例えば65歳で国民年金を月額7万円受給する権利があった場合70歳に遅らせるつまり、繰り下げ受給すると70,000円✕142%=94,200円になります。
改正後
受給開始時期が最大70歳から75歳に改正されました。65歳から10年遅らせることになるので、年間受給額が10年✕8.4%=84%増加します。
65歳で国民年金を月額7万円受給する権利があった場合、75歳に繰り下げ受給すると70,000円✕184%=128,800円になります。
繰り下げ受給をグラフにしてみた
原点が年金受給基準年の65歳です。X軸を年齢に、Y軸を累積年金額とします。
Pが65歳で受給する年金額とします。
赤色線が65歳で受給した場合です。毎年P分が積み上がっていきます。
青色線が70歳から受給した場合です。1.42Pは単年の受給額が65歳から受給した額の1.42倍であることを表しています。
黄色線が75歳から受給した場合です。1.84Pは単年の受給額が65歳から受給した額の1.84倍であることを表しています。
各線の交点は累積年金額が一致する年齢を表しています。
交差する1次直線をイコールで結んでXの値を求めれば、年齢がでます。
70歳で受給すると約82歳、75歳で受給すると約87歳になります。
どちらも受給開始から12年後に累積年金額が一致します。
やってみるとわかりますが、おもしろいのは66歳から受給しても受給開始から12歳後の78歳にならないと累積年金額が一致しません。
結論は何歳に受給開始年齢を繰り下げしても受給開始から12年後でないと、元は取れないということです。
無年金の期間をどうするか
70歳で受給開始すると、65歳から70歳までの5年間年金がもらえません。
75歳になると10年間年金がもらえません。
年間の年金額が増えること以上に無年金の期間のお金をどのように確保するかが、重要な問題です。
無年金期間の資金確保(案)
- 65歳からも働く
- 個人年金でカバーする
- 資産をと取り崩す
「個人年金でカバーする」と「資産を取り崩す」は若いうちから資金計画をたてておかないと難しいです。
現実的な選択は「65歳からも働く」です。働けるうちは繰り下げることができます。
働けるうちは働いて、繰り下げることをおすすめします。
受給開始をいつにするのか
無年金期間の資金確保(案)に連動していうと以下のとおりです。
年金受給開始(案)
- 仕事をやめた時
- 健康でなくなった時
- 個人年金が満期になった時
- 取り崩し資産に余裕がなくなった時
いずれも収入源がなくなるか、心細くなるタイミングで年金受給を開始します。
急な資金不足が生じたときには「年金のさかのぼり受給」を選択することもできます。
「年金のさかのぼり受給」とは、例えば68歳で受給する場合、繰り下げをせずに65歳にさかのぼって受給するか選択することができます。増額なしの未支給分を一括して受給できます。
急にお金が必要になった時に検討して下さい。
終末期の資金を確保する
何歳で受給すると生涯累積年金額が最大になるかは重要な要因ではありますが、終末期の資金をどうするかはそれ以上に重要かもしれません。
ひと昔前の年金制度がない時代は、終末期の世話はお金も含めて子どもに頼ることが当たり前でした。
しかし今の時代、お金だけでも子どもの世話になりたくない。
子どもにお金で迷惑はかけたくないと思う人は多いのではないでしょうか。
そのために、生涯累積年金額が減っても終末期に単年の年金を多く確保しておくことが大切だと思いますが、いかが考えますか。