私は63歳です。
最近、膝の痛みや頻尿、物忘れが増えてきたことを感じます。
身体の衰えを感じつつ、いつかは死ぬことは頭では分かっているつもりですが、まだ他人事のように感じています。
老後資金の確保と健康維持が今一番の悩みです。
老後の準備はしていますが、死ぬための準備はまだ何もしていません。
そんな時、『寿命が尽きる2年前』という本に出会いました。自分が一番気になっていた死についての心構えが書かれていることに気付きました。著者は多くの最期を看取ってきた医師として、死と向き合い、死を意識して真剣に生きることが重要であることを力説しています。
この本は今後のライフスタイルにとって非常に参考になりそうだと思い、書評と感想を記しておこうと思います。
本の基本情報
書 名 『寿命が尽きる2年前』
著 者 久坂部 羊
発行所 株式会社幻冬舎
発行日 2022年11月2日
著者紹介
著 者 久坂部 羊 (くさかべ よう)
一九五五年、大阪府生まれ。
医師・作家。
大阪大学医学部卒業。
二〇〇三年、デイケアや在宅医療など高齢者医療に携わりながら書いた小説『廃用身』でデビュー。第二作『破裂』が「平成版『白い巨塔』」と絶賛され、一〇万部を超えるベストセラーとなる。
他の小説作品に『無痛』『第五番』『芥川症』『MR』等がある。
一四年『悪医』で第三回日本医療小説大賞を受賞。
小説外の作品として『大学病院のウラは墓場』『日本人の死に時』『ブラック・ジャックは遠かった』『医療幻想』『人はどう死ぬのか』等がある。
本の目次
はじめに
第1部 ChatGPTを使う
第2部 どうすればアイディアを生み出せるか
第3部 生成系AI は社会をどう変える?
第4章 二年後の死は予測できるか
第5章 現代日本は心配社会
第6章 どちらに転んでも悩ましい現代医療
第7章 望ましい最期のお手本
第8章 寿命が尽きる二年前にすべきこと
おわりに
キーセンテンスの解説
死に対するアプローチ
著者は、死に対する考え方を次のような言葉で表現しています。
- 上手に死ぬ。
- 人生の潮時
- 死を意識して真剣に生きる。
- 死を受け入れる。
- 悔いのない人生を送る。
- 心の準備をする。
- 死と向き合う。
- 寿命に逆らわない。
- 寿命を受け入れる。
- 死を意識する。
- 今を有意義に生きる。
- 十分生きたという実感を持つ。
死は避けられません。それを避けることは誰にもできません。しかし、人々はそれを避けようとします。
多くの人が、健康維持のために人間ドックを受けたり、健康的な食事を心がけたり、運動をしたりしていますが、それらをおこっているだけで、死を真剣に意識し、死へ素直に向き合っているでしょうか?
私自身、60代になっても、そのような境地にはまだまだ達していないと感じます。私は健康に良いことや長生きできることに取り組んでいますが、死を意識することができていないのです。
死に当たっての著者の想い
我々は現在において、もう十分、寿命を延ばしているのです。であれば、残りの人生をさらに寿命を延ばすことに費やすよりは、楽しむことや、自分を解放することに使ったほうが有意義ではないでしょうか。
私は、このような境地に達するには、まだまだ未熟です。
この文章で言う「残りの人生」とは、「寿命が尽きる2年前」ということだと思いますが、事前にはなかなか予測できないでしょう。
とはいえ、人生を楽しむことや自分を解放することには共感します。人生の終わりが近づいても、辛いことばかりを考えたり、他人の目を気にしたりするのは嫌です。
寿命が尽きる2年前の兆候
死の2年前が分かれば、その準備をすることができます。
一般人がそれを予測することは容易ではありません。
しかし、医師の観点からは、何らかの兆候があるようです。本書の著者も、つぎのような兆候を挙げています。
- 理由なしに食欲がなくなる。
- 通常の量が食べられなくなる。
- 他人に「ずいぶん痩せたな」と言われる。
- 億劫、めんどくさい、しんどいとこぼすようになる。
- 体力の回復が非常に遅くなる。
- 寝たきりになる。
- 認知症になる。
食べられなくなるのは体が死に近づいている兆候だそうです。
特別な病気が原因でなくても、食欲がなくなったら、死の準備を始める時期かもしれません。
死が近づく感覚
動作も精神的な反応も鈍くなり、心に対する反応さえも鈍くなるようで、元気な健康な人の死に対する恐怖とは、少し死に対する感じが違うようです。
これが、本当に死が近づいたときの境地なのでしょうか?
もしそうであるなら、誰でもこのような境地に達することができそうなので、それほど恐ろしいものではなく、むしろありがたいと思えてきます。
寿命が尽きる2年間ですること
- できなかったこと
- 我慢してきたこと
- 自分を開放すること
人生のラストスパートとして、最後の2年間にやりたいことをやり遂げることが重要です。
寿命が尽きる2年間で病気になったら
治る病気のときは、医療に頼ればいいですが、治らない病気を無理に直そうとすると、徒に苦しみを深めます。
病気が治るということは、寿命が尽きる2年間ではないということです。
治らない病気であるということは、寿命が尽きる2年間です。
死が近づいているのですから、治そうとすると苦しむだけですから、治療はやめて「寿命が尽きる2年間ですること」をするということです。
死に向けての心構え
どんなに健康でも、最後は必ず死ぬのですから、その時に備えて上手に最期を迎えるための情報も必要だと思います。
最後に
読了後、感じたことは「死の2年前をどのように見極めるか」ということと、「死への恐怖から自由になっているかどうか」ということです。
このためには、自分自身が人生を全うしたと感じ、何も後悔しない境地に達する必要があると思います。
自分にはそのような境地にはまだ達していないと感じますが、とりあえずは2年前を見極めることに努めていきたいと思います。
最後に、著者の久坂部羊氏は医師としての知見と経験をもとに本書を執筆され、「寿命が尽きる2年前」について考えさせてくれました。
この本は、今後の人生に大きな参考になります。期待をこめて、著者の次回作の出版に向けて願っています。ますますのご活躍を祈念申し上げます。