前著『孤独のすすめ-人生後半の生き方』で、今後の生き方のヒントをいくつも提案していただきました。
著者の感性には共感するところが多くありました。
著者の深い思いをまだまだ覗いてみたく続編『続・孤独のすすめ-人生後半戦のための新たな哲学』を読んでみました。
著者の主張を一言でいうと「和して同ぜず」です。
すべてが共感できるわけではありませんが、今後の人生の生き方について参考にできる一冊です。
本の基本情報
書 名 『続・孤独のすすめ-人生後半戦のための新たな哲学』
著 者 五木 寛之
発行所 中央公論新社
発行日 2019年5月1日
著者紹介
著 者 五木 寛之(いつき ひろゆき)
1932年福岡県生まれ。
生後まもなく朝鮮にわたり、47年に引き揚げる。
52年早稲田大学露文科入学。
57年中退後、PR誌編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞を受賞。
また英文版『TARIKI』は2001年度「BOOKOFTHEYEAR」(スピリチュアル部門)に選ばれた。02年に菊池寛賞を受賞。
10年に刊行された『親鸞』で毎日出版文化賞を受賞。
著書に『如』『大河の一滴』『林住期』など多数。
独自の批評、評論活動でも知られ、エッセイ集『風に吹かれて』は総計460万部のロングセラーになっている。
『孤独のすすめ』(中公新書ラクレ、2017年)は30万部のベストセラーとなり、孤独ブームを生み出した。
本の目次
孤独と自由は手をとりあって
第1章 孤独に怯える人びと
第2章 「和して同ぜず」という思想
第3章 生物としての孤独とは
第4章 老いるヒントについて
第5章 孤独を愉しむ
終章 孤独は永遠の荒野ではない
対談 下重暁子 歳をとるにつれてひとりの時間が味わい深くなる
キーワードの解説
「老いるヒント」
エンディングの時期をいきいきと充実して過ごすためには、早くからそのことを考えていなければならない。つまり遅かれ早かれ、いずれ自分は孤独になるのだ、という覚悟です。
生前、家族や友だちに囲まれていても、いつかは一人になります。
それを事前に自覚しておくことです。
年を取ること、老化するとは最終的には孤独になることであると自覚することです。
「和して同ぜず」
世間の絆というものを大事にしながら、同時に、その中で、ひとりで生きてゆくことの意味を問うべきだと思うのです。
コミュニケーションを大事にしながら孤立する力をどう考えるか、
孤独とは、大勢の中に身を置きつつも、「和して同ぜず」ということなのではないか。
皆と共にいながら自分を失わない。
自己の持つ特異性や個性、才能などを守りつつ、他と集団を生きる。他人とちがう自分を守る。それが孤独の本質なのです。
「集団的孤独」
ここが本書の肝ですので、多くを引用しました。すべて同じ意味です。
アイデンティティを持ちながら、他人と交わる。
「自」と「他」を単純に対立したものと考えないで、両立するものとして考える。
そうすることで最終的に「他」と交わることがなくなっても、「自」が確立しているので孤独に埋没することはない。
「孤独を愉しむ」
直接に対面して人から教わる。
肉声を通して人から教わることは、なにかちがう。
興味のある分野の専門家のお話を聞きに行くことをお勧めしたい。
積極的に対面で「他」と対面することをすすめています。
「自」が確立していれば「他」と交わることは愉しい境地に達します。
「回想」
楽しかった日々、幸せだった年月をしみじみとふり返ることはそれこそ高齢者の特権ではないでしょうか。
後半は自分が歩んできた人生を回顧する時代。
若い人は未来に希望がありますが、高齢者の未来をみると死を意識せざる得ません。
高齢者は未来を見るのではなく、今までの人生を振り返ってみる。
そんな生き方をすすめています。
「覚悟」
孤独と向き合う覚悟ができれば、あるいは最期は一人なのだという覚悟ができていれば、悩みは半分ぐらいになるだろう。
一人になってしまう悩みは事前に自覚することが重要であると。
そのためには「個」を確立しておくことです。
「共感と憧れ」
一方に連帯の中で生きた人間に対する共感があり、また一方では、絆を断って孤独の中に生きた人間に対する憧れも、いまも私たちのなかにはあります。
「他」といっしょに過ごすことと「個」を確立すること、一見対立することが心のなかで同居しているのだろう。
最後に
著者の主張を一言でいえば、「和して同ぜず」です。
最後は一人になるのはすべての人間に定められた運命です。
それに対する準備が「和して同ぜず」です。
最後に著者の五木寛之様、2022年7月現在で満91歳です。お体をご自愛いただきますよう願いしたします。
生きるヒントを多数いただきありがとうございました。
ますますのご活躍をご祈念申し上げます。