しひろです。
今回はFP技能検定の不動産についてです。不動産の定番中の定番「建築面積と延べ面積の上限」です。
毎回必ず出題されます。絶対にミスは許されません。
慣れてしまえば容易に解ける問題です。
整理しましたのでお付き合い下さい。
整理しておくべき事項
「建ぺい率」による制限
「建ぺい率」とは敷地面積に対する建築面積の割合のことです。
防火対策や住環境を確保するために、地域ごとに「建ぺい率」の最高限度率を定め、建築面積を制限しています。
「建ぺい率」 = 建築面積 / 敷地面積
「建ぺい率」の4つの緩和
4つの緩和があり、試験には頻出です。
- 特定行政庁が指定する角地にある建築物
+10%緩和 - 防火地域内耐火建築物
+10%緩和 - 準防火地域内耐火建築物または準耐火建築物
+10%緩和 - 指定建ぺい率が80%の地域でかつ、防火地域内耐火建築物
100%に緩和
注意点は特定行政庁が指定していないと角地であっても緩和させません。
防火地域内の準耐火建築物には緩和はありません。
耐火建築物等 | 準耐火建築物 | |
---|---|---|
防火地域内 | 10%加算 | × |
準防火地域内 | 10%加算 | 10%加算 |
建物が耐火建築物で敷地が防火地域の内外にわたる場合は、その敷地すべて防火地域とします。
建物が耐火建築物・準耐火建築物で敷地が準防火地域と指定のない地域にわたる場合は、その敷地すべて準防火地域とします。
「容積率」による制限
「容積率」とは敷地面積に対する延べ床面積の割合のことです。
住環境の確保や建物と道路との関係を図るために、地域ごとに「容積率」の最高限度率を定め、延べ床面積を制限しています。
「容積率」 = 延べ床面積 / 敷地面積
- 「前面道路」の幅員が12m以上の容積率は指定容積率
- 「前面道路」の幅員が12m未満の容積率は指定容積率と前面道路の幅員✕法定係数を比較して小さい数値
法定係数 住居系用途地域:4/10、非住居系用途地域:6/10
※道路が2方向にあるときは、幅員が広いほうが対象にすること
※幅員4m未満の2項道路の場合は幅員は4mとすること
「特定道路」による「容積率」の緩和
簡単にいうと、敷地の近くに幅員の大きな道路があると、「全面道路」の幅員を加算して容積率を緩和する措置です。
「特定道路」が近くにあれば、「容積率」を緩和しますという制度です。
「特定道路」とは 幅員15m以上の道路のことです。
「前面道路」が「特定道路」に接続している場合、「容積率」が緩和されます。
以下の緩和要件に合致すると、理論上の「前面道路」の幅員が広くなります。それに伴って「容積率」が高くなって、緩和するという理屈になります。
なお「前面道路」とは敷地に接している道路のことです。建築基準法で「建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない。」となっています。
- 「特定道路」の幅員が15m以上 かつ
- 「前面道路」の幅員が6m以上12m未満 かつ
- 「特定道路」までの距離が70m以内 かつ
- 接道義務2m以上
下の図を見て下さい。
L が敷地から「特定道路」までの距離、W1 が「前面道路」の幅員に加算される理論的な幅員、W2 が「前面道路」の幅員、です。
次の関係が成り立ちます。
W1=(12m-W2)✕(70m-L)/70m
L :敷地から特定道路までの距離
W1 :前面道路の幅員に加算される理論的な幅員
W2 :前面道路の幅員
この式は下記により導き出すことができます。
△ABCと△EBFは相似だから
AC:EF=AB:EB
AC=12メートル-W2
EF=W1
AB=70メートル
EB=70メートル-L
(12m-W2):W1=70m:(70m-L)
W1=(12m-W2)✕(70m-L)/70m
今までの試験において、上の式は赤字の部分を伏して問題文に示されています。
計算式が示されなくても図が書ければ、式を導き出すことができます。
闇雲に暗記するより理解したうえで、暗記しましょう。
問題解法の手順
- 2項道路はセットバック
- 角地を確認
- 防火規制・耐火基準を確認
防火規制は厳しい規制に統一
- 全面道路の幅員を確認
2項道路の場合は一律幅員は4m
2方向に道路がある場合は幅員の大きい方を採用する。
幅員が12m未満なら容積率の規制あり
法定係数 住居系用途地域:4/10、非住居系用途地域:6/10
指定容積率と前面道路の幅員✕法定係数を比較して小さい数値
用途地域が住宅系と非住宅系が混在していても、それぞれの法定係数を使用 - 特定道路の幅員を確認
幅員が15m以上
演習
問題1
<甲土地の概要>
第一種住宅地域
指定建ぺい率:60%
指定容積率 :300%
防火規制なし
<建築予定建物>
耐火建築物
<問題>
建築面積の上限、延べ面積の上限を求めよ。
<解答>
・建築面積の上限
520㎡✕60%=312㎡
・延べ面積の上限
5m✕4/10=200%<300%
520㎡✕200%=1,400㎡
<コメント>
・建築面積の上限
建物は耐火建築物ですが、角地でない、防火規制がないため緩和なし
・延べ面積の上限
前面道路の幅員が12m未満なので容積率の規制あり
第一種住宅地域なので全面道路幅員による容積率制限法定係数は4/10
全面道路幅員✕容積率制限法定係数は4/10と指定容積率とを比較して小さい方を採用
問題2
<甲土地の概要>
商業地域
指定建ぺい率:60%
指定容積率 :200%
防火地域
<建築予定建物>
耐火建築物
<注意点>
前面道路は2項道路
甲土地の前面道路に対して反対側は河川でもがけ地でもない。
<問題>
建築面積の上限、延べ面積の上限を求めよ。
<解答>
・対象敷地面積
18m✕(20mー0.5m)=351㎡
・建築面積の上限
351㎡✕(60%+10%)=245.7㎡
・延べ面積の上限
4m✕6/10=240%>200%
351㎡✕200%=702㎡
<コメント>
・対象面積
全面道路が2項道路なので0.5mセットバックして対象面積を算出
なお、反対側は河川やがけ地であれば1mセットバックになる。
・建築面積の上限
前面道路の幅員が12m未満なので容積率の規制あり
建物は耐火建築物、角地でない、防火地域のため10%緩和
・延べ面積の上限
前面道路の幅員が12m未満なので容積率の規制あり
非住居の商業地域なので全面道路幅員による容積率制限法定係数は6/10
全面道路幅員✕容積率制限法定係数は6/10と指定容積率とを比較して小さい方を採用
問題3
<甲土地の概要>
第2種住居地域
指定建ぺい率:60%
指定容積率 :200%
準防火地域
<乙土地の概要>
近隣商業地域
指定建ぺい率:80%
指定容積率 :400%
防火地域
<建築予定建物>
耐火建築物
<注意点>
甲土地、乙土地は一体として利用
建ぺい率の緩和について特定行政庁の角地指定あり
<問題>
建築面積の上限、延べ面積の上限を求めよ。
<解答>
・対象面積
2項道路はないので甲土地500㎡、乙土地200㎡
・建築面積の上限
甲 500㎡✕(60%+10%+10%)=400㎡
乙 200㎡✕(80%+10%+10%)=200㎡
合計 600㎡
・延べ面積の上限
甲 8m✕4/10=320%>200%
500㎡✕200%=1,000㎡
乙 8m✕6/10=480%>400%
200㎡✕400%=800㎡
合計 1,800㎡
<コメント>
用途地域が混在しているときは面積の大きい地域の規制をうけるが、所定数値は変更にならない。
・建築面積の上限
甲 角地ではないが、乙と一体として利用する場合は角地の適用になり10%緩和
準防火地域内耐火建築物で10%緩和される。乙が防火地域のため甲は準防火地域だが防火地域の規制を受ける。(単独地でも10%緩和になる。)
乙 建物は耐火建築物、角地あり10%緩和、防火地域内耐火建築物ため10%緩和
・延べ面積の上限
前面道路の幅員が12m未満なので容積率の規制あり
2方向に道路がある場合は幅員の大きい方を採用する。
一体として利用する場合は前面道路に直接接していなくてもよい。
甲 第2種住居地域なので全面道路幅員による容積率制限法定係数は4/10
全面道路幅員✕容積率制限法定係数は4/10と指定容積率とを比較して小さい方を採用
乙 非住居の近隣商業地域なので全面道路幅員による容積率制限法定係数は6/10
全面道路幅員✕容積率制限法定係数は6/10と指定容積率とを比較して小さい方を採用
【注意事項】
- 用途地域が混在しているときは面積の大きい地域の規制をうけるが、所定数値は変更にならない。
- 個別で利用する場合は角地でないが、角地の土地と隣接して一体として利用する場合は、角地の適用を受ける。
- 混在して利用する土地の防火関係の規制が異なる場合、利用地全体にきびしい方の規制が及ぶ。
- 混在している土地を一体として利用する場合は、一方が前面道路に接していればよい。
【追記】
本番では表を作って計算したほうがミスがないかもしれません。次のような感じで
対象面積 ① | 建ぺい率 ② | 建築面積 ①×② | |
甲 | 500㎡ | 80% | 400㎡ |
乙 | 200㎡ | 100% | 200㎡ |
計 | 600㎡ |
対象面積 ① | 容積率 ② | 延べ面積 ①×② | |
甲 | 500㎡ | 200% | 1,000㎡ |
乙 | 200㎡ | 400% | 800㎡ |
計 | 1,800㎡ |
問題4
<土地の概要>
第2種住居地域
指定建ぺい率:80%
指定容積率 :400%
準防火地域
<建築予定建物>
耐火建築物
<注意点>
前面道路は道路法上の道路である。
<問題>
建築面積の上限、最大延べ面積の上限を求めよ。なお最大延べ面積を求めるに当たっては、「特定道路」による「容積率」の緩和を考慮すること。
<解答>
・対象面積
2項道路はないので400㎡
・建築面積の上限
400㎡✕(60%+10%)=280㎡
・延べ面積の上限
「特定道路」による「容積率」の緩和
W1=(12mーW2)✕(70mーL)/70m
W2=8m、L=25
よりW1=2.57m
理論上の幅員W1+W2=10.57m
10.57m✕4/10=422.8%>400%
400㎡✕400%=1,600㎡
<コメント>
・建築面積の上限
角地なし、準防火地域耐火建築物で10%緩和
・延べ面積の上限
前面道路の幅員が12m未満なので容積率の規制あり
第2種住居地域なので全面道路幅員による容積率制限法定係数は4/10
理論上の幅員✕容積率制限法定係数は4/10と指定容積率とを比較して小さい方を採用
<補足>
下図参照
△ABCと△EFBは相似
AC:EF=AB:EB
(12mー8m):W1=70m:(70mー25m)
W1=2.57m