2019年に「法人税基本通達」が改正され 法人の生命保険の経理処理に関する項目が大きく見直されました。
最近の試験はこの改正内容に関するものが増えています。
結論は【最高解約返戻率に基づく定期保険及び第三分野保険に係る保険料取扱表】を覚えることです。
順番にみていきますね。
保険金の受取人が、法人の生命保険
補償性が高い保険
定期保険、医療保険などが該当します。
保険関係は以下のとおりです。
- 契約者(保険料支払い者)
-
法人
- 被保険者
-
役員
- 保険金受取者
-
法人
- 最高解約返戻率
-
5%
- 保険料
-
10万円/年
- 保険期間
-
20年
経理処理 | 備 考 | |
前払保険料 支払 | 資産計上 (前払保険料) | 保険料を前払い 契約時一括支払いの場合 |
保険料支払 | 損金算入 (支払保険料) | |
保険金受取 | 益金算入 (雑収入) | |
解約返戻金 受取 | 益金算入 (雑収入) |
【仕訳例】
借 方 | 貸 方 | ||
定期保険料 | 100,000円 | 現金・預金 | 100,000円 |
【仕訳例】
借 方 | 貸 方 | ||
前払保険料 | 1,900,000円 | 現金・預金 | 2,000,000円 |
定期保険料 | 100,000円 |
保険料10万円/年×20年=2,000,000円です。
【仕訳例】
借 方 | 貸 方 | ||
定期保険料 | 100,000円 | 前払保険料 | 100,000円 |
初年度に資産の前払い保険料に計上した1,900,000円を、2年目以降20年目まで10万円づつ、取崩していきます。
借 方 | 貸 方 | ||
現金・預金 | 30,000,000円 | 雑収入 | 30,000,000円 |
借 方 | 貸 方 | ||
現金・預金 | 100,000円 | 雑収入 | 100,000円 |
貯蓄性が高い保険
終身保険、養老保険、個人年金保険などが該当します。
保険関係は以下のとおりです。
- 契約者(保険料支払い者):法人
- 被保険者;従業員・役員
- 保険金受取者:法人
経理処理 | 備 考 | |
保険料支払 | 資産計上 (保険料積立金) | |
保険金受取 | 資産取崩 (保険料積立金) 益金算入 (雑収入) | 雑収入=保険金 ー保険料積立金 |
解約返戻金 の受取 | 資産取崩 (保険料積立金) 益金算入(雑収入) | 雑収入=保険金 ー保険料積立金 |
【仕訳例】
借 方 | 貸 方 | ||
保険料積立金 | 1,000,000円 | 現金・預金 | 1,000,000円 |
借 方 | 貸 方 | ||
現金・預金 | 30,000,000円 | 保険料積立金 | 20,000,000円 |
雑収入 | 10,000,000円 |
借 方 | 貸 方 | ||
現金・預金 | 25,000,000円 | 保険料積立金 | 30,000,000円 |
雑損失 | 5,000,000円 |
保険料積立金より解約返戻金が少なければ、差額を損金(雑損失)に計上します。
定期保険及び第三分野保険に係る保険料の経理処理
2019年法人税基本通達改正によるものです。
保証性の高い保険、貯蓄性の高い保険を見てきました。
これらの保険料は保証性の高い保険であれは損金算入、貯蓄性の高い保険であれば資産計上します。
現実はそれらの中間的な保険も多数あります。そのことに対応するために国税庁が下記のとおり見直しをしています。
2019年7月8日以後の契約で契約者(保険料支払い者)が法人、被保険者が従業員・役員、保険金受取者が法人とする定期保険及び第三分野保険に係る保険料は下表のとおりとする。
簡単にいうと保険商品ごとに資産割合、損金割合などを決めていたのを、最高解約返戻率で資産割合、損金割合を決める簡易な方式に変更になりました。
なお定期保険とは定期保険のほか長期平準定期保険、逓増定期保険などです。
第三分野保険とはがん保険、医療保険、介護保険、⻑期傷害保険などです。
- 契約者(保険料支払者)
-
法人
- 被保険者
-
役員
- 保険金受取者
-
法人
【最高解約返戻率に基づく定期保険及び第三分野保険に係る保険料取扱表】
最高解約 返戻率 | 保険期間 | 資産計上割合 | 損金算入 割合 | 資産取崩 |
50%以下 | 全期間 | ー | 100% | なし |
50%超 70%以下 | 前半40% | 40% | 60% | 資産計上した分は最後の25%の期間で均等に取崩して損金算入 |
後半60% | ー | 100% | ||
70%超 85%以下 | 前半40% | 60% | 40% | |
後半60% | ー | 100% | ||
85%超 | 最高解約返戻率になる時までの期間 | 10年まで | 最高解約返戻率×90% | 100%ー最高解約返戻率×90% |
11年から | 最高解約返戻率 ×70% | 100%ー最高解約返戻率×70% | ||
上記の残りの期間 | ー | 0% | 100% |
※最高解約返戻率=解約返戻金最高額/保険料総額
※資産計上割合+損金算入割合=100%
※終身保険の第三分野保険(終身がん保険など)の保険期間は116歳とする。
【上記表の例外】
・保険期間が3年未満の定期保険料は全額損金算入
・最高解約返戻率70%以下、かつ、年換算保険料相当額(=保険料総額/保険期間)が30万円以下の保険の保険料は、全額損金算入
- 契約者(保険料支払い者)
-
法人
- 被保険者
-
役員(45歳)
- 保険金受取者
-
法人
- 保険料
-
150万円/年
- 20年間の支払済保険料相当額
-
3,000万円
- 20年後の解約返戻金
-
2,500万円
- 最高解約返戻率
-
85%(65歳時)
【仕訳例】
借 方 | 貸 方 | ||
前払保険料 | 900,000円 | 現金・預金 | 1,500,000円 |
定期保険料 | 600,000円 |
「定期保険及び第三分野保険に係る保険料取扱表」より最高解約返戻率85%の場合、前半の前半の40%の期間は資産(前払保険料)に60%計上して、損金(定期保険料)に40%算入することになっています。
資産(前払保険料)=150万円✕60%=90万円
損金(定期保険料)=150万円✕40%=60万円
【仕訳例】
借 方 | 貸 方 | ||
定期保険料 | 1,500,000円 | 現金・預金 | 1,500,000円 |
「定期保険及び第三分野保険に係る保険料取扱表」より最高解約返戻率85%の場合、後半の60%の期間は損金(定期保険料)に100%算入することになっています。
借 方 | 貸 方 | ||
現金・預金 | 80,000,000円 | 前払保険料 | 18,000,000円 |
雑収入 | 62,000,000円 |
前払保険料=90万円/年✕20年=1,800万円
雑入=8,000万円ー1,800万円=6,200万円
20年後に解約返戻金2,500万円を受取
借 方 | 貸 方 | ||
現金・預金 | 25,000,000円 | 前払保険料 | 18,000,000円 |
雑収入 | 7,000,000円 |
保険料積立金より解約返戻金が少なければ、差額を損金(雑損失)に計上します。
保険金の受取人が、遺族などの生命保険
保障性が高い保険
定期保険、医療保険などが該当します。
保険関係は以下のとおりです。
- 契約者(保険料支払い者)
-
法人
- 被保険者
-
役員
- 保険金受取者
-
遺族
区 分 | 経理処理 |
保険料 支払 | 損金算入 (福利厚生費または給与) |
保険金 受取 | 計上しない |
貯蓄性が高い保険
終身保険、養老保険、個人年金保険などが該当します。
保険関係は以下のとおりです。
- 契約者(保険料支払い者)
-
法人
- 被保険者
-
従業員・役員
- 保険金受取者
-
遺族
区 分 | 経理処理 |
保険料 支払 | 損金計上(給与) |
保険金 受取 | 遺族受取のため 計上しない |
養老保険(ハーフタックスプラン)
保険関係は以下のとおりです。
- 契約者(保険料支払い者)
-
法人
- 被保険者
-
全従業員・全役員
- 死亡保険金受取者
-
遺族
- 満期保険金受取者
-
法人
区 分 | 経理処理 | 備 考 |
保険料 支払 | 1/2 資産計上(保険料積立金) 1/2 損金算入(福利厚生費) | |
保険金 受取 | ・死亡保険金 保険料積立金を取崩して 雑損失に算入 ・満期保険金 保険料積立金を取崩して 雑収入に算入 | 雑入=保険金 ー保険料積立金 |
個人年金保険
保険関係は以下のとおりです。
- 契約者(保険料支払い者)
-
法人
- 被保険者
-
従業員・役員
- 死亡給付金受取者
-
遺族
- 年金受取者
-
法人
区 分 | 経理処理 | 備 考 |
保険料 支払 | 9/10 資産計上(保険料積立金) 1/10 損金算入(福利厚生費) | 特定の役職員を対象にし ているときは給与 |
保険金 受取 | ・死亡給付金 保険料積立金を取崩して雑損失 に算入 ・年金 雑収入に算入 |
まとめ
- 定期保険、医療保険の保険料は全額損金算入
- 終身保険、養老保険、個人年金保険の保険料は全額資産計上
- 定期保険、長期平準定期保険、逓増定期保険、がん保険、医療保険、介護保険、⻑期傷害保険の保険料は【最高解約返戻率に基づく定期保険及び第三分野保険に係る保険料取扱表定期保険及び第三分野保険に係る保険料取扱表】による