分筆登記で土地を有効活用、本人申請はできるのか?手続きから委任まで一挙公開

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土地を効率的に活用したい、相続や売買のために土地を分けたい。そんな時、あなたが必要とするのが「分筆登記」です。

ただ、専門的な知識や測量機器が必要で、一見複雑に感じるかもしれません。しかし、適切な手続きを経ることで、一つの土地が複数の独立した土地に生まれ変わるのです。

この記事では、分筆登記の手続き期間や費用、委任すべき業務について、誰にでもわかりやすく解説します。あなたの土地活用の新たな一歩を、この記事と共に踏み出しませんか?

目次

分筆とは

1つのまとまった土地を法的に複数の土地に分けることを分筆といいます。

たとえば1つのまとまった土地の一部を別の人に売る場合。分筆登記をして合わせて所有権を移転します。
また畑である土地の一部に住宅を建築する場合、分筆登記をして合わせて地目を畑から宅地に変更します。

分筆登記をおこなうには、まず法務局に分筆登記申請をします。手続きには、申請書や添付書類を作成して提出する必要があります。

分筆登記の手続き期間

繁忙期、申請の複雑さ、現地調査などにより一概には言えません。登記申請から10日から1ヶ月程度が一般的です。

また多くの土地は登記申請前に土地の測量、境界確認などをしておかなければならず、これも一概には言えませんが2ヶ月程度は必要です。

登記申請書類の作成に専門家を依頼する場合は、その作成にも時間が必要となりますので、それらのことを考慮すると余裕を持って手続きを始めることをおすすめします。

分筆登記の費用

以前は法務大臣が認可した報酬規定がありましたが、2003年に廃止になり個々の土地家屋調査士が自己判断で費用を決めています。
といわれても費用の目安がほしいですよね!調べました。

土地家屋調査士報酬ガイド

土地家屋調査士の業界団体である日本土地家屋調査士会連合会から出されている「土地家屋調査士報酬ガイド(2022年)」が参考になります。

これは加入土地家屋調査士の報酬状況を調査した令和元年度「土地家屋調査士事務所形態及び報酬に関する実態調査」を取りまとめたものです。

これによると土地の分筆登記の全国平均報酬額は税抜で422,909円です。
この金額は単なるアンケートではなく一定の条件の基で調査していますので相当信頼がおける資料です。

条件については「土地家屋調査士報酬に関する実態調査(設問)」で確認して下さい。

条件を変えると金額がどうなるかまではこのガイドではわかりません。

なお、この「土地家屋調査士報酬ガイド」は登記申請のすべての業務を委託する場合を想定しています。
作図は自分でするといったことは想定してません。

自分で経費を見積もってみよう

国土交通省 公共嘱託登記(土地家屋調査士)業務積算基準」と「令和5年3月から適用する設計業務委託等技術者単価について」を使うと自分で土地家屋調査士に委託する経費を積算(見積)することができます。

国土交通省 公共嘱託登記(土地家屋調査士)業務積算基準」は国土交通省が公共事業のために用地買収するに際し、買収用地を分筆や所有権移転するために土地家屋調査士に委託する経費を積算(見積)するためのものです。

この積算基準の見出しをまとめると次のようになっています。

1.調査業務(1)資料調査
(2)現地調査①事前調査
②筆界確認
③立会
2.測量業務(1)面積測量
(2)筆界標設置
3.申請手続き業務
4.書類の作成等
5.地役権図面の作成
6.筆界確認等への署名・押印

土地家屋調査士報酬に関する実態調査(設問)」の設問4 分筆登記をこの積算基準で行った場合の経費を算出してみます。

なお労務単価については「令和5年3月から適用する設計業務委託等技術者単価について」の単価を使用した。該当単価を抜粋すると次のとおりです。

労務単価抜粋
職種名適用させる職種単価
土地家屋調査士測量主任技師51,000円
補助者A測量技師補34,300円
補助者B測量助手32,200円
経費積算
種 別細 別単位数量土地家屋調査士
(人)
補助者A
(人)
補助者B
(人)
金 額
(円)
備 考
1.調査業務

資料調査
ア.
公簿類
1筆個60.0164,896当該地、隣接地の登記簿
イ.
地図類
1筆10.016816当該地の地図
ウ.
図面類
1筆個50.0369,180当該地、隣接地(道路除く)
の地積測量図

現地調査

事前調査
ア.
事前調査
1件10.2840.2840.21831,244

筆界確認
ア.
立会同行
1回10.50025,500半日1回
イ.
境界点確認
1点50.0340.0340.02017,721ABCDE 既設5点
エ.
多角測量
1点70.1680.1680.125128,487ABCDEYX 7点
③立会ア.
民有地境界
A.
立会確認
1点50.0690.0690.04136,029ABCDE 既設5点
2.測量業務
⑴面積測量
土地
300㎡以下1件10.5960.5960.30660,692264㎡
⑵境界標設置ア.
境界点測設
1点70.0950.0950.05268,445ABCDEYX 7点
イ.
境界標埋設
A.
コンクリート杭
1点10.0930.0930.093
10,927
新設D 1点
B.
金属標
1点50.0550.0550.05532,312新設ADEYX 5点
3.申請手続き業務
分筆分筆後の土地2筆まで10.2740.15719,359
4.書類の作成等
文案を要しないもの1通10.0402,040
(3)原本の複製1通10.0040.0241,027
6.筆界確認書等への署名・押印
筆界確認書等への署名・
押印
1名20.50051,000隣接者5名中2名
直接経費合計499,675
諸経費99,93520%
合計599,610

※ 金額 = 数量 ✕ 職種人数 ✕ 労務単価
※ 諸経費は積算基準の半分の20%とした。

公共積算は入札予定額の基になる金額です。そこから入札されるとして市場価格は50万円程度であると推測されます。

土地家屋調査士に全面委託するとこの程度の金額がかかります。

このように自分で見積額を積算することはできますが、具体的な費用は作業内容や難易度によるため、確定的な金額を知るためには専門家への見積もりが必要です。

分筆登記業務の委任

分筆登記だけでなく、すべての登記申請は当事者が申請することが大原則です。

不動産登記法

(当事者の申請又は嘱託による登記)

第十六条 登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、することができない。

では司法書士や土地家屋調査士はどんな立場なのか?

司法書士法

(業務)

第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

土地家屋調査士法

(業務)

第三条 調査士は、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

司法書士、土地家屋調査士とも他人の依頼を受けて登記業務をおこない報酬を得る生業です。
司法書士、土地家屋調査士との業務区分は次のとおりになっています。

  • 表示に関する登記は、土地家屋調査士
  • 表示に関する登記以外は、司法書士

いずれにしても自己所有不動産の登記申請を、自分ですることはなんら問題はありません。

次の39条は分筆登記に関して改めて所有者が登記するとなっています。

不動産登記法

(分筆又は合筆の登記)

第三十九条 分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

ではなぜ司法書士や土地家屋調査士に委任するのでしょうか?
法律上、所有者が登記申請をすることになっていても、専門的な登記の知識と技術や特別な測量機器がないと登記申請書を作成することができないのです。

分筆登記には測量機器や専門的な知識、CADソフトなどが必要となります。これらを使いこなせない場合や、時間や手間をかけたくない場合は、専門家である土地家屋調査士に業務の全てもしくは一部を委任することになります。

どの業務を委任するか

測量機器を持っていて測量ができる。CADソフトが使えると地積測量図を自分で作成することができますし、分筆登記申請業務すべてを自分でやることも可能です。

そこまでできる方は、あまりいないのではないでしょうか?
測量のことは知らない。CADソフトは使ったことがないとなると、すべての業務を委任したほうが無難です。

では測量機器がなくで自分て測量できないが、測量のことは少し分かるし、CADソフトを使ったことがある人はどのように委任すればよいのでしょうか?

ポイントは地積測量図とはどのようなことを記載するかをわかっているかどうかです。

測量ができないと地積測量図は作成できない

分筆登記申請のポイントは添付書類である「地積測量図」です。

不動産登記規則

(地積測量図の内容)

第七十七条 地積測量図には、次に掲げる事項を記録しなければならない。

 地番区域の名称

 方位

 縮尺

 地番(隣接地の地番を含む。)

 地積及びその求積方法

 筆界点間の距離

 国土調査法施行令第二条第一項第一号に規定する平面直角座標系の番号又は記号

 基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値

 境界標(筆界点にある永続性のある石杭又は金属標その他これに類する標識をいう。以下同じ。)があるときは、当該境界標の表示

 測量の年月日

 近傍に基本三角点等が存しない場合その他の基本三角点等に基づく測量ができない特別の事情がある場合には、前項第七号及び第八号に掲げる事項に代えて、近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録しなければならない。

77条の7号、8号にあるように分筆登記申請の際には、分筆申請地の近傍に基本三角点等(世界測地系で設置された基準となる点)が存する場合には、それを使用して測量を行い、法務局に提出する地積測量図を作成しなければ分筆登記申請を原則、受け付けてもらえなくなりました。

早い話、測量の一定以上の知識と測量機器(トータルステーションやGNSS測量機器など)がないと地積測量図を作成することができません。

単に分筆の筆界点座標を登記地図に落とせばいいといったわけにはいかないのです。 

地積測量図の作成者は誰?

地積測量図には申請人らんの他に作成者らんがあります。

所有者Aは土地家屋調査士Bに測量を委託して座標値を算出してもらったとします。
座標値がわかればCADソフトが使えれば、所有者A自らが地積測量図を作図することはできます。

この場合作成者は誰になるのでしょうか?
所有者Aでしょうか?
土地家屋調査士Bでしょうか?

答えは土地家屋調査士Bです。

この点について法務局に問い合わせたところ次の本を紹介してくれました。

「Q&A 表示に関する登記の実務 第3巻」の107Pに測量した者と地積測量図を作成した者が異なる場合は測量した者が地積測量図の作成者になると記されています。

これは法務省の課長通知(昭和61.9.29民三第7272号)が根拠になっています。

どこまで委任するかは登記費用の額に影響します。
忙しくて登記申請にかまっていられないならば、全業務委任になり登記費用は「土地家屋調査士報酬ガイド」で示した額になります。

測量だけ委任すると「土地家屋調査士報酬ガイド」で示した額の半額以下になるでしょう。
国土交通省 公共嘱託登記(土地家屋調査士)業務積算基準」で各自積算してみて下さい。

地積測量図の作成方法については次の記事を参考にして下さい。

まとめ

分筆とは、一つの土地を法的に分ける手続きです。売買や相続などで必要とされます。事前準備を含めると手続きには一般的に2~3ヶ月程度が必要です。

分筆登記の費用は、専門家である土地家屋調査士への報酬と諸経費が主で、具体的な金額は作業内容や難易度によります。手続きには専門的な知識と機器が必要で、自身で対応が難しい場合は専門家に委任することが一般的です。特に地積測量図の作成は測量が必要であり、作成者は図面を作成した人ではなく測量を行った土地家屋調査士となります。

分筆は土地の有効利用や相続対策に有効ですが、専門的な知識が必要になります。
費用も含めてどこまで自分でできるかを見極め、専門家の助けを借りることも検討しましょう。

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