【書評】『ロスト・ケア』

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母親を介護しているので気になって手にした『ロスト・ケア』
読み放題のAudibleで聴いていたのですが、インパクトが大きくKindleでも購入しました。

家族を在宅で介護していて、心の中にある理想と現実とのギャップに悩んでいる方、終わりが見えない介護に追い詰めらて思い悩んでいる方に読んでいただきたいです。

その他、介護施設で介護に携われている方、市役所などで介護行政の担当者の方々、老人介護の関係者の皆さんにもおすすめです。

いつか必ずやってくる介護、心の底から考えさせられる小説です。

目次

本の基本情報

書 名 『ロスト・ケア』
著 者 葉真中 顕(はまなか あき

発行所 株式会社光文社
発行日 2015年2月

著者の紹介

著 者 葉真中 顕(はまなか あき
1976年東京都生まれ。
2013年、老人介護を扱った犯罪小説「ロスト・ケア」で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。

選考委員の綾辻行人は「掛け値なしの傑作」、今野敏は「文句なしの傑作」と評し、満場一致での受賞となった。

同作は「ミステリが読みたい!」で第5位(新人第1位)、「このミステリーがすごい!」で第10位、「週刊文春ミステリーベスト10」で第14位と高く評価された。

2015年、『絶叫』で第36回吉川英治文学新人賞候補、第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補。

2017年、『コクーン』で第38回吉川英治文学新人賞候補。

2019年、『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞受賞、第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)受賞。

2022年、『灼熱』で第7回渡辺淳一文学賞受賞

ウィキペディア

本の目次

序章
第1章 天国と地獄
第2章 軋む音
第3章 ロスト
第4章 ロングパス
第5章 黄金率
終章

感想

介護疲れ、介護ノイローゼ、介護地獄、このように介護に追い詰められる人々、本来はどうあるべきなのだろうか?

介護を受ける側

介護を受ける側からすると、できるだけ迷惑をかけたくないと思っていても、日に日にできることができなくなっていく現実に直面します。認知症になるとその現実もわからなくなる。

死にたいと思うが、自分では死ねない。
殺してくれと頼むが現実には殺人などできるわけがない。

しかしこの小説の主人公はそのような介護老人を次々に殺していく。
「殺すことで家族を救う。」という大義名分の上に、

人は人に迷惑をかけずに死ぬことはできないのです。
殺人をもって迷惑を断ち切るのは大いなる嫌悪感があります。

私の父は厳格な人で非常に怖かったです。しかし死に際はいつもニッコリしていて看護師にも評判が良かったことを記憶しています。

できるだけ迷惑をかけないで、死んでいきたいという父の想いがあったのかもしれません。
病の中でも、そんな気持ちがあれば迷惑をかけてもいいのです。大した迷惑ではありません。

介護をする側

介護をする側からすると、何年も介護を続けているといつ終わるんだろうか?
早く終わってほしいという気持ちになるのはよくわかります。

主人公はそんな気持ちと介護を受けている父の「殺してくれ」の一言から一線を超えてしまいます。
それだけではなく、自分がやっていることは介護だと、喪失の介護「ロスト・ケア」だと。

記憶がなくなり意思判断ができなくなったからといって、人を殺して言い訳がありません。
人を消し去って問題を解決することはあってはいけないことです。

繋がりの中で解決するのです。それが介護制度です。
介護制度は色々問題はありますがいい制度だと思います。

ケアマネージャ、ヘルパー、介護施設職員など自分で人脈を作らなくても、これらの人が色々支援してくれます。
重要なのは自ら「助けて!」といわないとまわりの人には聞こえないことです。
一人で抱え込まないで、安易な方法で解決しないで、

映画化

2023年3月24日より(金)全国ロードショー!

主演   松山ケンイチさん
ヒロイン 長澤まさみさん
監督   前田哲さん

最後に

最後に著者の 葉真中 様、老人介護の苦悩について鋭く追求していただき、改めて生きること、死ぬことについて考えさせられました。また社会問題としての介護についても問題提起していただきありがとうございます。

社会の矛盾をテーマにした小説を期待しております。今後ますますのご活躍をご祈念申し上げます。

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