こんにちは しひろ です.。
私は今年(2020年)3月に定年退職になりました。定年後どのように人生を送ればいいのか模索しています。
そのようななか、人生の最後「死」考えることで今後の人生の道標がみつかるのではと思い巡らしました。そのような状況下でこの本『もしも一年後、この世にいないとしたら』に出会いました。
精神科医として多数のガン患者と語り合い、死に直面した方々の苦悩をつうじで残された人生を、どのように生きていけばいいのかが伺えます。
「死」について悩んでおられる方、生きることの目的が見いだせない方に本書をおすすめいたします。
本の基本情報
書 名 『もしも一年後、この世にいないとしたら』
著 者 清水 研
発行所 株式会社 文響社
発行日 2019年10月11日
著者の紹介
清水研(しみずけん)1971年生まれ。
精神科医・医学博士。
金沢大学卒業後、都立荏原病院での内科研修、国立精神・神経センター武蔵病院、都立豊島病院での一般精神科研修を経て、2003年、国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。
以降一貫してがん患者およびその家族の診療を担当している。
2006年、国立がんセンター(現:国立がん研究センター)中央病院精神腫瘍科勤務となる。
現在、同病院精神腫瘍科長。
日本総合病院精神医学会専門医・指導医。
日本精神神経学会専門医・指導医。
日本サイコオンコロジー学会登録精神腫瘍医。
本の目次
はじめに 大切なことを先延ばしにしていませんか
序章 がんは体だけでなく心も苦しめる
第1章 苦しみを癒すのに必要なのは、悲しむこと
第2章 誰もが持っているレジリエンスの力
第3章 人は死の直前になって、心のままに生きていないことに気づく
第4章 今日を大切にするために、自分の「want」に向き合う
第5章 死を見つめることは、どう生きるかを見つめること
おわりに 「死」を意識して初めて生きることの「光」に気づく
本の要旨
この本の目的を私なりにまとめると、「著者の精神科医としての経験を通じてガンを体験された多くの方の話が書かれています。そのことから学ぶことで、人生の羅針盤を定めることできるようになる」ということだと思います。
人は死を宣言されると解離状態になるという。つまり茫然自失で何がなんだかわからない状況です。
次に絶望感・怒り・悲しみといた感情が生じます。
「なぜ自分だけかこんな目にあわなければいけないんだ」「俺の気持ちなんがわかるものか」と家族に八つ当たりしたり、人にもよりますが泣き叫ぶこともあるます。
この状況下で患者は3つの死の恐れを感じると言っています。
1つ目が「死に至るまでの恐怖」です。これは例えば「末期ガンになってどんな苦痛がまっているのだろうか?」「延命治療はどんなもんなんだろうか?」といったことです。
2つ目が「自分がいなくなる現実的な問題」です。「私がいなくなた後、妻1人で生活していけるのか?」など、残された家族の経済的な心配です。
3つ目が「自分が消滅するという恐怖」です。これは自分がいなくなるとは、どういうことか理解できない恐怖です。宗教観にもとづき死後の世界を求める人、死後には肉体も精神もすべてなくなるのだと考える人、頭でわかっていても現実では想像できない怖さです。
そのようないろいろな感情をすべて出し尽くした後に、残された生きる期間をどのように過ごせばいいのかといった悩みが生じてきます。
今までの自分の人生を振り返り、自分の人生とはなんであったのか?素直な気持ちで自分の心と向き合うようになると言っています。
将来を見据えてきた生き方を止め、今を大事に生きるようになります。著者はそのような気持ちを5段階で述べています。
①人生に対する感謝
②新たな視点(可能性)
③他者との関係の変化
④人間としての強さ
⑤精神性的変容
「①人生に対する感謝」では今日生きられることに感謝し、精一杯生きるようになるといいます。私たちも健康はいつ失われるかわかりません。しかし年とともに健康は必ず失われるものであることを肝に命じて、健康である今に感謝していきたいものです。
「②新たな視点(可能性)」では生き甲斐について深く考えるようになります。残り少ない人生のなかで、本当に自分のやりたいことをやるようになります。考え方が変わってきます。
「③他者との関係の変化」では素直な気持ちで自分の生い立ちを見つめ直すことで、今まで育ててくれた両親への感謝、家事一生懸命にけなげに手伝ってくれたわが子、何回も来て励ましてくれた友人等、身近な人々の何気ない行動に心から感謝するようになります。
「④人間としての強さ」では自分のためにまた、身近な人達のためにも1日でも長く生きられるように精一杯頑張ろういう気持ちになります。
「⑤精神性的変容」では人それぞれではありますが、ある人は神の存在を意識し、ある人は改めて見る自然の美しさに気づくようになります。
また著者は「あるがままの自分(素の自分)」「もうひとりの自分」をそれぞれ「wantの自分」「mustの自分」と位置づけています。
「もうひとりの自分」つまり、やらなければならないと何時もまわりにあわせすぎて、本来の自分ではない自分(「mustの自分」)。
それから、「あるがままの自分(素の自分)」つまり、自分のやりたいことをやる自分(「wantの自分」)に変わっていくと言っています。
自分のwantを聞き、自分らしく生きることを選択するということです。
著者は「死」が日常から隔離さるることを危惧しています。そうではなくて「死」を見つめることは、どう「生きる」かを見つめることだと気づきましたと言っています。
感想
死に直面すると人は最初、慌てふためくがその後、自分のこれまでの人生を振り返り、残された人生を自分らしく生きるという。
この本はガンで余命宣告を慰める本ではありません。
余命宣告を受けた方々の一生懸命人生を生き抜いた軌跡から、人生に迷い悩んでいるひと全てに捧げる本でないかと思います。
今現在健康な人でも人生には限りがあります。未来のためではなく、今をしっかりと自分らしく生きていくこと。
このことが人として最も大切なことであると感じました。
まとめ
この本は著者の精神科医としての経験を通じて、ガンを体験された多くの方の話がのっています。そのことを学ぶことで、読者の人生の羅針盤をみつけることを目的として書かれています。
今を大事に生きるようになります。自分のやりたいことをやるようになります。
自分のやりたいことに耳を当て、自分らしく生きることを選択するようになります。
そのような人生を送って下さい。
生きる指標が見つけられる一冊です。