ライフプランを作成するときに、資金の積立額や取崩額を試算します。その際に使うのが6つの係数です。
6つの係数は利率一定、期間一定、複利運用を前提として、速算で金額を算出する方法です。
6つの係数は過去12回の試験で3回出題されています。頻出問題ではありませんが、FPには必須事項なのでこの際完璧に理解しておきましょう。
2級、3級を目指す人にも参考になりますよ。
3つのポイント
6つの係数のポイントは以下の3つです。
- 文章を読んでどの係数を使用するのか、理解できること
- 係数が与えられなくても、問題が解けること
- 複数の係数を使う問題に慣れること
1番が基本の基本です。
2番は慣れて下さい。慣れてしまえばラッキー問題になります。
3番は1級用です。少し込み入っていますがこれも慣れれば問題ありません。
各種の係数
終価係数と現価係数
終価Y = 現価X ✕ 終価係数a
現価X = 終価X ✕ 現価係数b
a ✕ b = 1
終価Y = 現価X / 現価係数b
現価X = 終価Y / 終価係数a
終価係数
現在の価格(現価)から将来の価格(終価)を求めるために使います。
現価係数
将来の価格(終価)から現在の価格(現価)を求めるために使います。
「a ✕ b = 1」は2つの係数が逆数の関係にあることを示しています。
「a = 1/b」に変形して、
終価Y = 現価X ✕ 終価係数a
現価X = 終価X ✕ 現価係数b
に代入すると、
終価Y = 現価X / 現価係数b
現価X = 終価Y / 終価係数a
が導き出されます。
年金終価係数と減債基金係数
年金終価Y = 減債基金の積立額X ✕ 年金終価係数a
減債基金の積立額X = 年金終価Y ✕ 減債基金係数b
a ✕ b = 1
年金終価Y = 減債基金の積立額X / 減債基金係数b
減債基金の積立額X = 年金終価Y / 年金終価係数a
年金終価係数
毎年の積立額(減債基金積立額)から将来の価格(年金終価)を求めるために使う。
減債基金係数
将来の目標価格(年金終価)から、毎年の積立額(減債基金積立額)を求めるために使う。
【キーワード】 積立
「減債基金」というのはピーンときませんね!
「減債基金」= 年積立額
と考えると理解できるのではないでしょうか。
「減債基金」はそもそも行政用語(国・地方自治体で使われる用語)です。
減債(借金を減らすこと)のために、お金を基金に積み立てておくことを意味します。
資本回収係数と年金現価係数
資本回収額Y = 年金現価X ✕ 資本回収係数a
年金現価X = 資本回収額X ✕ 年金現価係数b
a ✕ b = 1
資本回収額Y = 年金現価X / 年金現価係数b
年金現価X = 資本回収額X / 資本回収係数a
資本回収係数
現在の価格(年金現価)を返却する場合に、毎年の返却額(資本回収額)を求めるために使う。
現在の価格(年金現価)を受け取る場合に、毎年の受取額(資本回収額)を求めるために使う。
現在の価格(年金現価)を取り崩す場合に、毎年の取崩額(資本回収額)を求めるために使う。
年金現価係数
毎年の返却額(資本回収額)から現在必要な価格(年金現価)を求めるために使う。
毎年の受取額(資本回収額)から現在必要な価格(年金現価)を求めるために使う。
毎年の取崩額(資本回収額)から現在必要な価格(年金現価)を求めるために使う。
【キーワード】 返却、受取、取崩
理解のポイント
文章を読んでどの係数を使用するのか、理解できること
【問題】
- 年利3%10年間で100万円を貯めるには、毎年いくら貯金する必要があるか?
- 年利3%の借入金500万円を10年間毎年返済する場合の年返済額はいくらか?
- 年利3%10年間で100万円を貯めるには、いくらのお金が必要か?
- 年利3%で運用している個人年金から10年間毎年20万円を受け取るためには元金はいくら必要か?
- 年利3%で毎年20万を貯金すると、10年後にいくらになるか?
- 100万円を年利3%で運用した場合、10年後の金額はいくらか?
期 間 | 10年 |
終価係数 | 1.3439 |
現価係数 | 0.7441 |
減債基金係数 | 0.0872 |
年金終価係数 | 11.4639 |
資本回収係数 | 0.1172 |
年金現価係数 | 8.5302 |
【解答】
1
1,000,000円 ✕ 減債基金係数0.0872
= 87,200円
2
5,000,000円✕ 資本回収係数0.1172
= 586,000円
3
1,000,000円✕ 現価係数0.7441
= 744,100円
4
200,000円✕ 年金現価係数8.5302
= 1,706,040円
5
200,000円✕ 年金終価係数11.4639
= 2,297,780円
6
1,000,000円✕ 終価係数1.3439
= 1,343,900円
【解説】
回答のための手順
①「毎年いくら」とありますので、年額を算出する問題です。
次に、「10年間で100万円を貯める」とありますので、将来の目標額が100万円とわかります。
次のグラフがイメージできれば減債基金係数を使う問題だとわかります。
2「年返済額は」とありますので、年額を算出する問題です。
次に、「借入金500万円」とありますので、現在の額が100万円とわかります。
以上から次のグラフがイメージできれば資本回収係数を使う問題だとわかります。
3「いくらのお金が必要か」とありますので、現在の必要額を算出する問題です。
次に、「10年間で100万円を貯める」とありますので、将来の額が100万円とわかります。
以上から次のグラフがイメージできれば現価係数を使う問題だとわかります。
4「元金はいくら必要か」とありますので、現在の必要額を算出する問題です。
次に、「毎年20万円を受け取る」とありますので、受取額が20万円とわかります。
以上から次のグラフがイメージできれば年金現価係数を使う問題だとわかります。
5「10年後にいくらになるか」とありますので、将来の額を算出する問題です。
次に、「毎年20万を貯金する」とありますので、積立額が20万円とわかります。
以上から次のグラフがイメージできれば年金終価係数を使う問題だとわかります。
6「10年後にいくらになるか」とありますので、将来の額を算出する問題です。
次に、「100万円を年利3%で運用」とありますので、現在100万円あることがわかります。
以上から次のグラフがイメージできれば終価係数を使う問題だとわかります。
係数が与えられなくても、問題が解けること
先程の問題をもう一度
年利3%10年間で100万円を貯めるには、毎年いくら貯金する必要があるか?
期 間 | 10年 |
現価係数 | 0.7441 |
年金終価係数 | 11.4639 |
年金現価係数 | 8.5302 |
減債基金係数の問題ですが、減債基金係数が資料にありません。その場合は、
「減債基金係数 ✕ 年金終価係数 = 1」を変形して
「減債基金係数 = 1 / 年金終価係数」を使います。
1,000,000円 ✕ 減債基金係数
= 1,000,000円 ✕ 1 / 年金終価係数
= 1,000,000円 / 11.4639
= 87,230円
端数の関係で少し違います。誤差です。
複数の係数を使う問題に慣れること
【問題1】
60歳から10年間にわたって、個人年金を毎年70万円を受け取るために、40歳から60歳までの20年間、一定額を毎年積み立てる。この場合の積立額はいくらになるか。
積立、受取とも運用は複利で年2%とする。
円未満は四捨五入すること。
期 間 | 10年 | 15年 | 20年 |
終価係数 | 1.219 | 1.3459 | 1.4859 |
現価係数 | 0.8203 | 0.743 | 0.673 |
減債基金係数 | 0.0913 | 0.0578 | 0.0412 |
年金終価係数 | 10.9497 | 17.2934 | 24.2974 |
資本回収係数 | 0.1113 | 0.0778 | 0.0612 |
年金現価係数 | 8.9826 | 12.8493 | 16.3514 |
【解答1】
年金現価額
= 700,000円 ✕ 10年年金現価係数8.9826
= 6,287,820円g
積立額(減債基金額)
= 6,287,820円 ✕ 20年減債基金係数0.0412
= 259,058円
【解説1】
「毎年の積立額はいくらになるか」とありますので、積立額を算出する問題です。
目標額が問題文からわかりませんが、「10年間にわたって毎年70万円を受け取る」とあることから、受取額が70万円であることがわかります。
以上から次のグラフがイメージできればできれば解答が見えてきます。
右側の三角形で年金現価額が算出できます。
算出された年金現価額は左側の三角形では年金終価額になります。
年金現価額 = 年金終価額から積立額(減債基金額)を算出します。
【問題2】
2,000万円を年2%で複利運用しながら15年間、毎年100万円を取り崩した場合、15年後の残額はいくらか。
円未満は四捨五入すること。
期 間 | 15年 |
終価係数 | 1.3459 |
現価係数 | 0.743 |
減債基金係数 | 0.0578 |
年金終価係数 | 17.2934 |
資本回収係数 | 0.0778 |
年金現価係数 | 12.8493 |
【解答2】
取崩総額(年金終価)
= 1,000,000円 ✕ 年金終価係数17.2934
= 17,293,400円
未使用額
= 20,000,000円 ー 17,293,400円
= 2,706,600円
増加額(終価額)
= 2,706,600円 ✕ 終価係数1.3459
= 3,642,813円
【解説2】
問題文から下記のグラフが書ければ解答できます。
15年間100万円を取崩すので、年金終価係数を使って取崩総額(年金終価)を計算します。
(図の赤線)
2,000万円ー 取崩総額(年金終価)= 未使用額になります。
未使用額は利子を生みますので終価係数を使って計算します。
(図の青線)
※ 未使用額が利子を生むことを忘れないように
まとめ
一覧表にまとめるとこんな感じになります。参考まで
一括タイプ | 積立タイプ | 取崩(返却)タイプ | |
将来額 | 終価係数 | 年金終価係数 | 資本回収係数 |
現在額 | 現価係数 | 減債基金係数 | 年金現価係数 |