現時点で相続税がかかるのか?かからないのか?
かかるとしたら税額はどうなるのか?
相続を受ける配偶者や子(被相続人)はいきなり相続税といっても戸惑うでしょう。
事前に見込額がわかれば、被相続人は安心するでしょう。
相続税そのものではなく、相続税の基礎になる評価額のうち投資信託の評価額について説明します。
なお相続税額まで知りたい場合は以下の記事を参考にして下さい。
評価額の計算方法はなにを見れば分かるのか?
計算方法の根拠はすべて国税庁の財産評価基本通達によります。
それをわかりやすく説明したものがNo.4644 貸付信託・証券投資信託の評価とNo.4632 上場株式の評価です。
次の項目で説明しますが、No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価が一般投資信託と日々決済型投資信託の計算式の根拠が示されています。
No.4632 上場株式の評価は上場投資信託の計算式の根拠が示されています。
相続税評価額の計算手順
目論見書を見つける
目論見書とは投資判断に必要な投資信託の特色、リスク、運用実績、申込み方法、手数料、投資信託を持つにあたっての注意点など、詳細な情報が書かれている書類のことです。
該当投資信託購入先の証券会社のWebページから目論見書を探します。
目論見書で投資信託の区分を確認
下記の3つの区分のうち、どの区分に分類されるか確認します。
- 区分1:一般投資信託
日々決済型投資信託、上場投資信託に区分されない投資信託 - 区分2:日々決済型投資信託
- 区分3:上場投資信託
日々決済型投資信託とは毎日決算されている投資信託のこと。MRF・MMFなどが該当します。
上場投資信託とはETFや上場投信と呼ばれている投資信託のことです。
目論見書の商品分類を見て、MRF・MMF・ETFの記載がないか探します。
MRF・MMFの記載があれば、日々決済型投資信託ですし、ETFの記載があれば上場投資信託になります。
それ以外は一般投資信託です。
参考までに投資信託がどのように分類されているかを示しておきます。
投資信託協会から出されている「商品分類に関する指針」による分類です。
単位・追加型区分 | 単位型 | |
追加型 | ||
地域による区分 | 国内 | |
海外 | ||
内外 | ||
対象資産による 区分 | 株式 | 一般 |
大型株 | ||
中小型株 | ||
債券 | 一般 | |
公債 | ||
社債 | ||
その他債券 | ||
格付等クレジット による属性 | ||
独立した区分 | 不動産(リート) | |
その他資産 | ||
資産複合 | 資産配分固定型 | |
資産配分変更型 | ||
補足区分 | MMF | |
MRF | ||
ETF | ||
インデックス型 | ||
特殊型 | ||
決算頻度による 区分 | 年1回 | |
年2回 | ||
年4回 | ||
年6回(隔月) | ||
年12回(毎月) | ||
日々 | ||
その他 | ||
対象地域による 区分 | グローバル | |
日本 | ||
北米 | ||
欧州 | ||
アジア | ||
オセアニア | ||
中南米 | ||
アフリカ | ||
中近東(中東) | ||
エマージング | ||
投資形態による区分 | ファミリーファンド | |
ファンド・オブ・ファンズ | ||
為替ヘッジによる 区分 | 為替ヘッジあり | |
為替ヘッジなし | ||
対象インデックス の属性 | 日経225 | |
TOPIX | ||
その他の指数 | ||
特殊型 | ブル・ベア型 | |
条件付運用型 | ||
型/絶対収益追求型 |
計算式の区分に基づき評価額を計算
区分ごとに計算方法が違います。分けて説明します。
一般投資信託
【計算式】
評価額
=1口当たり基準価額 ✕ 口数
− 課税時期において解約請求等した場合に源泉徴収されるべき所得税額相当金額
− 信託財産留保額および解約手数料
源泉徴収されるべき所得税相当額
= 相続発生時に売却したと仮定して場合の含み益 ✕ 税率20.315%
相続発生時に売却したと仮定して場合の含み益
= 相続発生時の1口当たりの基準額 ✕ 口数
ー 取得価額
【計算例】
ファンド名 | 楽天・全世界株式 インデックス・ ファンド |
1口当たり基準価額 | 1.6607円 |
口数 | 3,248,863口 |
取得価額 | 5,000,000円 |
含み益 | 395,387円 |
所得税相当額 | 80,322円 |
信託財産留保額 | 0円 |
解約手数料 | 0円 |
評価額 | 5,315,064円 |
1口当たり基準価額は1万口当たりで示される場合がありますので注意して下さい。
日々決済型投資信託(MRF・MMF)
日々決済型投資信託で実際に利用されているのは、MRFとMMFです。
MRFは証券総合口座として利用されている公社債投資信託です。
そのため公社債など安全性の高い運用がおこなわれており、運用資産には株式は含まれません。
MMFは中・長期の公社債を中心に運用する証券投資信託です。そのため株式で運用する株式投資信託よりリスクが低い商品です。
【計算式】
評価額
= 1口当たりの基準額 ✕ 口数
+ 再投資されていない未収分配金(A)
− Aにつき源泉徴収されるべき所得税相当額
− 信託財産留保額および解約手数料
国税庁が示す計算式は上記のとおりですが、現実は金利が限りなく低いため、未収分配金はないに等しく、それに連動して所得税相当額もほぼありません。
そのため評価額= 1口当たりの基準額 ✕ 口数としても、一般には問題は生じないです。
上場投資信託(ETF)
上場投資信託(ETF)とは東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託で、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などと連動するように運用されています。
上場投資信託(ETF)は株式と同じように取引所で売買ができます。
そのようなことから相続税の評価額は株式と同様に計算します。
【計算式】
評価額
= 下記のうち最も低い値 ✕ 口数
被相続人が亡くなった日の終値
被相続人が亡くなった月の終値平均
被相続人が亡くなった月の前月の終値平均
被相続人が亡くなった月の前々月の終値平均
被相続人の亡くなった日が土日、祝日、年末年始には終値がありません。
終値がない場合は、相続開始日にもっとも近い日の終値を相続開始日の終値とします。
まとめ
一般投資信託の評価額
=1口当たり基準価額 ✕ 口数
− 課税時期において解約請求等した場合に源泉徴収されるべき所得税額相当金額
− 信託財産留保額および解約手数料
日々決済型の投資信託(MRF・MMF)の評価額
= 1口当たりの基準額 ✕ 口数
+ 再投資されていない未収分配金(A)
− Aにつき源泉徴収されるべき所得税相当額
− 信託財産留保額および解約手数料
上場投資信託(ETF)の評価額
= 下記のうち最も低い値 ✕ 口数
被相続人が亡くなった日の終値
被相続人が亡くなった月の終値平均
被相続人が亡くなった月の前月の終値平均
被相続人が亡くなった月の前々月の