2022年12月に与党が「令和5年度税制改正大綱」を、それを受けて政府が「令和5年度税制改正の大綱」を閣議決定しました。
NISAは正式名「少額投資非課税制度」といい、NISAの対象にした株式や投資信託等の金融商品から得られる利益(売却益や分配金等)の20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が課税されない制度です。
今回の改正で「少額」から「それなりの額」に大きく変わりました。
具体的にいえば生涯投資上限額が800万円から2,600万円(=1,800万円+800万円)へ3倍以上になります。
NISAは非課税だからとりあえずやっておくから、NISAでどれだけ投資するかに変わっていきます。
そんな新NISA制度の概要と戦略を考えていきます。
記載内容は2023年1月4日時点の内容です。今後法律案が国会で審議されます。内容が変更される可能性がありますのでご承知ください。
現行NISAと新NISA制度の比較
現行NISA制度 | 新NISA制度 | |||
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
実施時期 | 2023年まで | 2042年まで 開始は2023年まで | 2024年から無期限 | |
年間投資上限額 | 120万円(一般NISA選択時) | 360万円(合計) | ||
120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 | |
非課税期間 | 5年 | 20年 | 無制限 | |
生涯投資上限額 | 600万円 | 800万円 | 1,800万円 | |
1,200万円 | 600万円 | |||
一般つみたて併用 | 不可 | 可能 | ||
売却時の限度額 | ー | 買付額分の投資枠再利用可能 | ||
対象者 | 日本在住の18歳以上の成人 | |||
買付方法 | 一括・積立 | 積立 | 一括・積立 | 積立 |
対象商品 | 株式・投資信託・ETF | 投資信託 | 株式・投資信託 ・ETF | 投資信託 |
改正のポイント
- 非課税期間が無制限
- 年間投資上限額が360万円に拡大
- 生涯投資上限額が最大1,800万円に
- 「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の併用が可能
- 商品を売却すれば、空いた投資枠で再投資可能
非課税期間が無制限
現行制度の一般NISAの非課税期間が5年、つみたてNISAが20年でしたが、新NISAでは期間が無制限になりました。
生涯投資上限額1,800万円ないであれば30年でも40年でも非課税で投資することができます。
年間投資上限額が360万円に拡大
年間投資上限額120万円から360万円に3倍に拡大されました。
月ごとの積立額をいくらにするか、自分で決める必要があります。
生涯投資上限額が最大1,800万円に
富裕層を優遇しないために設定されたといわれています。
現役を引退するまでに生涯投資上限額が最大1,800万円程度は確保したいです。
「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の併用が可能
現行NISAの「一般NISA」が「成長投資枠」に、「つみたてNISA」が「つみたて投資枠」に名称が変更になります。
現行NISAでは「一般NISA」か「つみたてNISA」のどちらかを選択する必要がありましたが、新制度では「成長投資枠」の生涯投資上限額1,200万円、「つみたて投資枠」の生涯投資上限額600万円の枠内であれば、併用ができるようになりました。
商品を売却すれば、空いた投資枠で再投資可能
現行NISAで購入した商品を売却するとその枠は使うことができなくなってしまい、非常に使い勝手が悪いです。
改善の要望が聞き入れてなのか、新NISAでは商品を売却すれば、空いた投資枠で再投資可能になり、商品の入れ替えができるようになります。
現行NISA制度の扱い
現行NISA制度が廃止になるわけではありません。特に「つみたてNISA」は2042年まで利用できますから、そのまま継続していくべきです。
現行NISAから新NISAに改正されるのではなく、現行NISAは温存されて、別制度として新NISAができると理解して下さい。
ポイントは次のとおりです。
- 現行NISAで投資した商品は新NISAの非課税限度総額1,800万円の外枠
- 現行のNISA口座からの移管はできない。
- 現行NISA制度の課税措置を適用
NISA改正に当たっての雑感
つみたてNISAの上限33,333円ならなんとかなると投資していた人も多いのでは。「とりあえず積み立てておけばOK」でした。
新NISAでは最大年間360万円投資できます。月額30万円です。なかなか月額30万円を投資するのはきついのではないでしょうか。
投資額を自分で決める必要になってきます。預金と投資のポートフォリオを見直してみる必要があります。
その場合課税枠で投資していた商品をどうするか?今後、再検討する必要があります。
2023年中のNISA口座開設はありうるのか?
新NISAは2024年から始まります。それまで待っている必要はないです。
新NISA生涯投資上限額1,800万円とは別枠で現行NISAが利用できるからです。
現行制度の「一般NISA」であれば1年分120万円、「つみたてNISA」であれば20年間で800万円が新NISAとは別枠で投資できます。
特に「つみたてNISA」は2023年から始めても全く問題はありません。
シュミレーション
24年から開始したとして20歳、40歳、50歳のシュミレーションを考えてみました。参考にして下さい。
やり方として次の方法があります。
自分で手を動かして試算すると実感が湧きます。
- エクセルで試算表を作る。
- エクセルのFV関数を使う
- 試算するWebページを利用する。
❶ ❷ はエクセルファイルを添付しました。良かったら参考にして下さい。
❸ は次のブログカードで確認できます。
20歳
積立投資3万円/月✕12ヶ月✕50年=1,800万円、利回り3%で積立額は約42,000万円弱になります。
40歳
積立投資5万円/月✕12ヶ月✕30年=1,800万円、利回り3%で積立額は約29,000万円強になります。
50歳
積立投資100万円/年✕6年+積立投資5万円/月✕12ヶ月✕20年=1,800万円、利回り3%で積立額は約27,000万円弱になります。
結局何を買えばいいのか?
NISAのことはわかったけど、結局なにを買えばいいのか?一番基になる点ですよね。
これについては金融庁が参考になる資料を提示しています。
つみたてNISA対象になる217本の商品を紹介しています。参考になります。
また投資信託については次の記事が参考になります。
次の「日経平均とNYダウの30年間株価比較」も参考になります。
NYダウが日経平均の約13倍の成長をしています。これの意味するところを理解して下さい。
1991年11月終値を100としてそれぞれ指数化したものです。