認知症は肉体的に苦痛がともなうものではありません。
知らないうちにじわじわと忍び寄ってくるようなイメージの病気です。
認知症が悪化して意思能力がなくなってくると、やれたことができなくなります。
元気なうちに準備しておかないと、後悔しても後悔しきれません。
自分のためであり、家族のためでもあります。
ぜひともしておいてほしいことを8つ選んでみました。
認知症になるとどうなるのか?
認知症になるといきなり意思能力がなくなるということはなく、徐々に意思能力が低下していきます。
また認知症は症状に波があり、意思能力の有無を判断するのが難しいといわれています。
昨日は意思能力が減退していたが、今日は朝から調子がよくはっきりと意見を言い、意思能力があるような態度をとることもあります。
認知症患者の意思能力は短期的には上がり下がりの波はありますが、長期的には低下していきます。
意思能力を有していないと判断されると、色々な法律行為はできなくなります。
自分がしたことによって、どのような結果が生じるか理解できること
法律効果を実現させるために意思を表示すること
具体的には各種の契約(売買・賃貸借・雇用・贈与・請負など)、遺言など
認知症になるとできなくなること
認知症になって意思能力がない場合、法律行為が無効になったりできなくなったりします。
具体的には以下のようなことがあげられます。
- 預貯金の入出金、振替
- 不動産の売買
- 金融商品(株式・債券・投資信託など)の売買
- 財産の相続
- 延命治療の要望
- 遺言書の作成
認知症によって意思能力がないとみなされ、上記に掲げた法律行為はできなくなります。
認知症になる前にやること
まずは認知症にならないこと、認知症の予防に全力を尽くすことです。
次に前項で示した「認知症になるとできなくなること」をひとつ1つつぶしていくことです。
私が思う項目を列挙します。
- 認知症の予防
- お金の管理
- 情報の管理
- 自動車の運転
- 介護保険
- 今後の生活環境
- 終末期医療
- 遺言書の作成
認知症の予防
物忘れが多くなったらMCI(軽度認知障害)のスクリーニング検査を受けましょう。
MCI(軽度認知障害)とは健常な状態と認知症の中間の状態のことです。
詳しくは下記を参考にして下さい。
次に物忘れについて理解しましょう。物忘れは必ずしも認知症の前兆とは限りませんが、認知症になる場合もあります。
以下の記事をどうぞ。
認知症予防で最も効果の大きいのは有酸素運動だと言われています。一日30分程度の散歩やウォーキングで全身の血流を改善し、脳の細胞を活性化する効果が期待できます。
認知症になる前の元気なうちに自分の想いを示しておきましょう。
「病気」や「死」への準備もできなくなります
体力に自信のある方はスロージョギングがおすすめです。
お金の管理
お金で最初に困るのはATMの操作がわからなくなることです。
キャッシュカードの暗証番号が思い出せなくなった。
通帳や銀行印をなくしてしまった。
このような状況になると自分でお金の管理をすることは難しいかもしれません。
ただお金の出し入れ方法が分からなくても、お金の出し入れの意思表示ができるのであれば、自分の子どもや同居親族にお金の出し入れをすることは可能です。
具体的に意思表示を示してキャッシュカードを貸したり、通帳・印鑑と委任状を渡したりして、依頼することには何ら問題はありません。
重要なのは本人の意思能力がしっかりしており、意思表示していることがわかることです。
お金を引き出すことに限定すれば以下のステップを踏んでいくと良いと思います。
- 口頭約束をして世話人がキャッシュカードでお金を引き出す。
- 委任状をいっしょに提出して、世話人が窓口でお金を引き出す。
- 本人と世話人で財産管理契約を締結して、世話人がお金を引き出す。
- 家族信託契約を締結して信託口座から世話人がお金を引き出す。
- 成年後見制度を活用して、後見人がお金を引き出す。
詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
情報の管理
パソコンやスマホをよく使っている人、要注意ですよ。
パスワードを整理していますか?
パスワードを管理しておかないと家族は困惑します。
相続財産が把握できない状況に陥ります。
詳細はこちらで
自動車の運転
高齢者のブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違い事故や逆走事故が多発しています。
他人事と思わないで下さい。
人生の終盤に来て温和に終える予定であった人生が悲惨なものになります。
運転免許証の返納を検討して下さい。
介護保険
介護保険は「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みの創設」の趣旨のもと、2000年より開始されました。
元気なうちは保険料を支払っているだけで、あまり気にもしなかったと思います。
認知症などの病気になって、自分が介護される側になると非常にありがたい制度です。
元気なうちに介護保険制度についてりかいしておきましょう。
制度の詳細については以下の記事を参考にして下さい。
今後の生活環境
今後介護状態になった場合の生活環境について、家族と相談しましょう。具体的には
- 在宅介護か施設入居のどちらを希望するのか?
- 在宅介護の場合、誰に介護してもらいたいか?
- 施設入居の場合、どのような施設に入居したいのか?
施設入居は家族だけではわからないことが多いです。専門家と相談することをおすすめします。
終末期医療
意思がはっきりしているうちに、終末期医療についてどうしてほしいか家族に説明しておきましょう。
遺言書の作成
意思能力が薄弱になると遺言書が書けなくなってしまいます。
いきなり遺言書を書けと言われても難しいと思います。
とりあえずは下書きから始めてみて下さい。
何回も下書きを修正することで遺言書ができます。
以下の記事は文例を入れて説明しています。参考にして下さい。
まとめ
【認知症になる前にやっておくこと】
- 口頭約束をして世話人がキャッシュカードでお金を引き出す。
- 委任状をいっしょに提出して、世話人が窓口でお金を引き出す。
- 本人と世話人で財産管理契約を締結して、世話人がお金を引き出す。
- 家族信託契約を締結して信託口座から世話人がお金を引き出す。
- 成年後見制度を活用して、後見人がお金を引き出す。