しひろです。
今回はFP1級技能検定の「相続・事業継承」の「非上場株式の評価」をまとめます。
超定番問題です。
4つの評価方式
非上場株式の評価方式には類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式・配当還元方式の4つがあります。
大会社であれば原則は類似業種比準方式での評価になりますが、純資産価額方式も選択できます。下の表を参照下さい。
原則的評価方式 | 同族会社の同族 株主以外の株主 | ||
原則 | 選択可 | ||
大会社 | 類似業種比準方式 | 純資産価額方式 | 配当還元方式 |
中会社 | 併用方式 | 純資産価額方式 | |
小会社 | 純資産価額方式 | 併用方式 |
類似業種比準方式
類似業種比準価額
=株価×(配当比率+利益比率+純資産比率)/3×調整率×1株当たりの資本金額/50円
計算の手順
類似業種比準価額=類株×(配+利+純)×1/3×調整×1株金額/50円
配当金額を求める。(過去2年間の平均)
年利益金額を求める。(過去2年間の平均と直前期の低い額)
当月、前月、前々月と前年、前2年の最低額
大0.7、中0.6、小0.5
公式に当てはめる。
50円当たりの類似業種比準価額小数点1位未満切り捨て
類似業種比準価額小数点1位未満切り捨て
純資産価額方式
純資産価額
=(相続税評価額における純資産額 ー 含み益×法人税相当率37%)/ 発行済株式数
※「1株(50円)当たりの株式総数」ではなく「発行済株式数」で割ることに注意して下さい。
計算の手順
純資産価額=(相純資産額ー(相純資産額ー簿純資産額)×37%)/発行株数
併用方式
併用方式による価額
= 類似業種比準価額 × L + 純資産価額 × (1 ー L)
楷書規模 | Lの割合 |
中会社の大 | 0.9 |
中会社の中 | 0.75 |
中会社の小 | 0.6 |
小会社 | 0.5 |
配当還元方式
配当還元価額
= 配当金額 /10% × 1株当たりの資本金額 /50円
利回りが10%の場合の投資額を配当還元価額としています。
つまり、利回り10%=配当金額/投資額で投資額を算出して、1株を50円に相当して当たりの株価を計算します。
演習問題
〈X社の概要〉
- 業種 土木建設業
- 本金等の額 10,000万円( 発行済株式総数200,000株、すべて普通株式、1株につき1つの議決権を保有、株式の譲渡制限 あり)
- 株主構成 本人150,000株、妻20,000株、長男30,000株
- X社の財産評価基本通達上の規模区分は「中会社の中」
- X社は、特定の評価会社ではない。
- 類似業種の1株(50円)当たりの株価の状況
- 課税時期の属する月の平均株価 239円
- 課税時期の属する月の前月の平均株価 237円
- 課税時期の属する月の前々月の平均株価 234円
- 課税時期の属する月の半年間の平均株価 232円
- 課税時期の前年の平均株価 235円
- 課税時期の属する月以前2年間の平均株価 233円
比準要素 | X社 | 類似業種 |
1株(50円)当たりの 年配当金額 | ○○○○円 | 4.5円 |
1株(50円)当たりの 年利益金額 | ○○○○円 | 20円 |
1株(50円)当たりの 簿価純資産価額 | ○○○○円 | 221円 |
※すべて1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額である。
事業年度 | 売上高 | 所得金額 | 配当金額 |
直前期 | 68,000万円 | ※3,950万円 | ※※※720万円 |
直前々期 | 72,000万円 | ※※4,110万円 | 700万円 |
直前々期の前期 | 59,000万円 | 3,650万円 | 610万円 |
※非経常的な利益金額50万円が含まれている。
※※非経常的な利益金額200万円が含まれている。
※※※記念配当100万円が含まれている。
科 目 | 相続税評価額 | 帳簿価額 | 科 目 | 相続税評価額 | 帳簿価額 |
流動資産 | 29,730万円 | 29,730万円 | 流動負債 | 11,942万円 | 11,942万円 |
固定資産 | 51,280万円 | 44,680万円 | 固定負債 | 20,468万円 | 20,468万円 |
合 計 | 83,390万円 | 74,410万円 | 合 計 | 32,410万円 | 32,410万円 |
問1
〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額を求めなさい。
端数処理は、計算過程において
1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の株数で除した年配当金額は10銭未満を切り捨て
1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の株数で除した年利益金額は円未満を切り捨て
各要素別比準割合および比準割合は小数点第2位未満を切り捨て
1株当たりの資本金等の額50円当たりの類似業種比準価額は10銭未満を切り捨て
X社株式の1株当たりの類似業種比準価額は円未満を切り捨てること
問2
〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの純資産価額を求めなさい。
答えは、円未満切捨てて円単位とする。
問3
〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式による価額を求めなさい。
答えは、円未満切捨てて円単位とする。
解答
問1 1,216円
問2 2,382円
問3 1,507円
問1の解説
類似業種比準価額
=類似業種の株価×(配当比率+利益比率+純資産比率)/3×調整率×1株当たりの資本金額/50円
類似業種の株価
- 課税時期の属する月の平均株価
- 課税時期の属する月の前月の平均株価
- 課税時期の属する月の前々月の平均株価
- 課税時期の属する月の半年間の平均株価
- 課税時期の前年の平均株価
- 課税時期の属する月以前2年間の平均株価
※ 5つのうち最も低いものを採用します。
「課税時期の属する月の半年間の平均株価 」は対象外です。間違わないようにしましょう。
よって一番価格の低い「課税時期の属する月以前2年間の平均株価 233円」になります。
1株(50円)当たりの株式総数
空欄の「1株(50円)当たりの年配当金額」「1株(50円)当たりの年利益金額」を算出するために、「1株(50円)当たりの株式総数」を計算します。
1株(50円)当たりの株式総数 = 資本金等の額 / 50円
1株(50円)当たりの発行済株式総数
= 資本金等の額10,000万円 / 50円
= 200万株
発行済株式総数200,000株との違いが、わかりますか?
問いにある20万株は実際の株数です。
一方、200万株は1株が額面50円と仮定した場合の株数です。
類似業種の配当金額、利益金額、純資産価額は国税庁から報告されるのですが、その金額が1株50円で表示されています。それと同基準で対比するためです。
1株(50円)当たりの年配当金額
配当金額には、特別配当、記念配当等の名称による配当金額のうち、将来毎期継続することが予想できない金額を除く。
配当金額 =(直前期配当金額 + 直前々期配当額)/2
1株(50円)当たりの配当金額 = 配当金額 /1株(50円)当たりの株数
(0.1円未満切り捨て)
配当金額には将来毎期継続することが予想できない金額を除く必要があります。
直前期配当金額720万円ー記念配当100万円=620万円
直前々期=700万円
配当金額
=(直前期配当金額+直前々期配当額)/2
=(620万円+700万円)/2 =660万円
1株(50円)当たりの配当金額
=配当金額/1株(50円)当たりの株数
=660万円/200万株=3.3円
問文の「1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の株数で除した年配当金額は10銭未満を切り捨て」=0.1円未満切り捨てます。
1株(50円)当たりの年利益金額
利益金額には、固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除く。
利益金額は直前期利益金額と(直前期利益金額+直前々期利益金額)/2を比較して低い金額とする
1株50円当たりの利益金額=利益金額/1株50円当たりの株数
(円未満切り捨て)
利益金額=所得金額です。
直前期利益金額1,950万円
(直前期利益金額+直前々期利益金額)/2
=(3,950万円ー50万円+4,110万円ー200万円)/2
=3,905万円
非経常的な利益金額50万円、200万円を除いた。
3,905万円と直前期の利益金額3,950万円と比較して低い額3,905万円が採用する利益金額になります。
1株(50円)当たりの利益金額
=利益金額/1株(50円)当たりの株数
=3,905万円/200万株=19円
問文に「1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の株数で除した年利益金額は円未満を切り捨て 」とあることに注意して下さい。
1株(50円)当たりの簿価純資産価額
「純資産 = 資産 ー 負債」です。
「資産・負債の状況」表より
簿価純資産価額
= 簿価資産合計 74,410万円 ー 簿価負債合計 32,410万円
= 42,000万円
1株(50円)当たりの簿価純資産価額
= 42,000万円 / 1株(50円)当たりの発行済株式総数200万株
= 210円
調整率
大会社調整率=0.7
中会社調整率=0.6
小会社調整率=0.5
問題文より中会社なので、調整率0.6です。
「中の○」の○は類似業種価額方式の計算には関係ありません。
1株当たりの資本金額
1株当たりの資本金額
=資本金額 /発行済株式総数
=10,000万円/200,000株
=500円/株
算出式に代入
株価
=類似業種の株価×(a/A+b/B+c/C)÷3×調整率×1株当たりの資本金額/50円
=233円×(3.3円/4.5円+19円/20円+210円/221円)÷3×0.6×500円/50円
=233円×(0.73+0.95+0.95)÷3×0.6×500円/50円
「各要素別比準割合は小数点第2位未満を切り捨て」
=233円×0.87×0.6×10
「比準割合は小数点第2位未満を切り捨て」
=121.6円
「1株当たりの資本金等の額50円当たりの類似業種比準価額は10銭未満を切り捨て」
小数点第1位未満を切り捨て
=1,216円
「X社株式の1株当たりの類似業種比準価額は円未満を切り捨て」
問2の解説
純資産価額
= (相続税評価額における純資産額 ー 含み益×法人税相当率37%)/ 発行済株式数
※「1株(50円)当たりの株式総数」ではなく「発行済株式数」で割ることに注意して下さい。
「資産 ー 負債 = 純資産」です。
相続税評価額における純資産評価額
= 83,390万円 ー 32,410万円
= 50,980万円
帳簿価額における純資産評価額
= 74,410万円 ー 32,410万円
= 42,000万円
含み益
= 相続税評価額における純資産評価額 ー 帳簿価額における純資産評価額
= 50,980万円 ー 42,000万円 = 8.980万円
含み益の法人税
= 8.980万円 ✕ 37% = 3,322.6万円
純資産価額
= (50,980万円 ー 3,322.6万円) / 発行株式数20万株
=2,382円
円未満四捨五入
※「1株(50円)当たりの株式総数200万株」で割らないで下さいね。
問3の解説
併用方式による価額
= 類似業種比準価額 × L + 純資産価額× (1 ー L)
楷書規模 | Lの割合 |
中会社の大 | 0.9 |
中会社の中 | 0.75 |
中会社の小 | 0.6 |
小会社 | 0.5 |
問文に「中会社の中」とありますので
L = 0.75
類似業種比準価額 =1,216円
純資産価額 = 2,382円
併用方式による価額
= 1,216円 × 0.75 + 2,382 × ( 1ー0.75 )
= 912 + 595.5
= 1,507円
円未満四捨五入